前半と後半ではまるで違うチームだった。後半立ち上がりの5分を耐えきられれば、もう少し楽に勝てたろうに。
でもね、勝ちは勝ちだ。それでいい。
5節まで続いていた同じスターターを組むことはできない。全治三週間の茂庭照幸の穴を埋めるのは田中裕介。センターバックの2枚とダブルボランチには高さと強さを求めていたが、中澤聡太のフィジカルはまだ完調ではないようだ。サイドバックのリザーブに椋原健太が入っている。
前半は、実に小気味良く試合を進められた。ソウザ、山村和也のダブルボランチと杉本健勇、ブルーノ・メネゲウのサイドハーフが攻撃的にボールを繋ぎ、リカルド・サントスと柿谷曜一朗へとボールを渡していく。
左サイドはリカルド・サントス、ブルーノ・メネゲウ、ソウザが阿吽の呼吸で動きまわり、右サイドは松田陸、杉本、柿谷のトライアングルで崩す。アクセントに丸橋祐介まで加わって十重二十重と千葉ゴールを攻め立てる。
柿谷のキラーパスに反応したリカルド・サントスのシュートと、その後の柿谷の詰めは正確性を欠いてしまった。杉本のシュートも相手キーパー佐藤優也に阻まれた。けれど、流れに変化なし。
前半32分にはついに千葉ゴールを仕留める。コーナーキックから山下達也のヘディング、バーに嫌われたが、ソウザが反応よく詰めて先制。
さらに6分後には左サイドいい位置からのフリーキック、丸橋のボールはソウザにドンピシャ。わずか6分間でソウザが2ゴールを奪い、セレッソはスコア上も流れの上でも大きなアドバンテージを得た。
チャンスを逸しても、まだ余裕。 |
その後も攻め立てたセレッソは前半だけでシュート2桁、スタジアムにいるセレッソサポーターの殆どは楽勝だと感じていたはずだ。
ところが、二つの誤算が後半の窒息感を呼んでしまった。
ひとつは立ち上がり1分も経たないうちに千葉フォワードエウトンにゴールを奪われたこと、もうひとつはダブルボランチの疲弊だ。
失点は、ままあることだ。この試合を含めて5勝1分けのチームでも3ゴール奪われている。ましてベストメンバーではないのだし、言い訳はできる。問題は奪われた時間で、後半は難しい流れになる、相手が攻めに出てくるという受け身のメンタルを持ってしまった。
もうひとつ、ボランチの疲弊はシステムの破綻を呼んだ。
今期のセレッソの土台は、前述のとおり高く、強く、激しい4人のファイターで組まれたセンターバックとボランチのユニットだ。だがここから茂庭が抜け、ソウザが疲弊してしまった。
このユニットが高いラインを保てれば、相手を封じることができるし、前線が闇雲に相手を追う「バンザイアタック」も無駄にならない。けれどユニットが後ろに下がればチームは間延びし、守備も機能しなくなる。
リカルド・サントスも疲弊……。 |
千葉はもう追いかけるしかないのだし、リスクをおって前掛かり。セレッソは受け身になってジリジリと自陣に引きこもっている。前半とはまるで逆の流れになってしまった。
この流れをせき止める活躍をしたのは、関口訓充であり、澤上竜二であり、今期初登場の扇原貴宏だったと思う。
後半28分 |
後半45分 |
後半45+2分 |
3人とも出場期間は短い、澤上、扇原に至っては後半アディショナルタイムからの登場だ。だが与えられたタスク、つまり援護も無い中でボールを出来る限り相手陣内に運び、時間と空間を消費するという骨の折れる仕事をしてくれた。
扇原の左サイド突破を観たが、胸がすいた想いだった。これまで出番がなく溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように躍動していた。
この層の厚さは、セレッソが今年なんとしても昇格し、強いチームを作るのだという強い決意を示すものだ。玉田圭司や清原翔平という「犠牲者」を生んでいる、あまいいいやり方ではないかもしれない。けれど、今年昇格できなければ、セレッソ自体がシュリンクしてしまう。悪魔に心を差し出しても、勝ち続けなくてはいけないのだ。
だから今年は、勝ったとしても喜びは少ない。どちらかというと安堵という言葉が近いかもしれない。
まだ不敗、これからも、不敗で。
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