少し時間もできたから、長崎への遠征を忘備録として残そう。
長崎は亡くなった親父が産まれた場所、俺自身のルーツみたいな街だ。だからなのか、通うたびに住んだこともないのに、妙な懐かしさを感じる。
2016年6月8日16時21分 長崎県諫早市 宇都町27-1
長崎空港から大村、諫早、長崎に向かうリムジンバス、もうここからしてローカル色にあふれたものだ。大村駅も諫早駅もこれでもかというくらい郷愁を誘うたたずまい。
諫早駅前からこれまた渋いバスに揺られると、突然不釣り合いなほど真新しい、磁器でできたような真っ白なスタジアムが見えてくる。長崎県立総合運動公園陸上競技場、V・ファーレン長崎のホームスタジアムだ。
陸上競技場とはいえ、二階建てのスタンドには程よく傾斜があり、見やすい。船の帆をモチーフにした屋根は下層スタンドの最前列まで覆っていて、よほどの雨でもない限り吹き込まないようになっている。コンコースも手狭ではなく、アクセス以外は取り立てて文句のつけようがない。
雲仙ハムのホットドッグ、チーズカレー |
それに、長崎の人は誰もが穏やかで、ついついのんびりしてしまう。売店の飲み物も安いから、無理して近所のコンビニで買出ししなくてもいい。お酒もビールやチューハイが長居と変わらない安さで置いてあるし、白ワインや赤ワインまで飲める。それも、立ち飲み屋の日本酒くらいコップになみなみと注いでくれる。それで400円、九州のスタジアムはアルコールの価格がおかしい。
あれで、柿谷曜一朗のケガさえなければ最高だったのだけど。
店内はこじんまりとした定食屋といった程で、ドアを開けるとニンニクの猛烈な匂いと豪快なおばさん達がお出迎えしてくれる。
看板のチャンポンは、中華街にあるような山の幸海の幸をふんだんに盛り込んだものとは違い、かんぼこ、豚肉、あさりかなにかのむき身と野菜、それだけのシンプルなものだ。けれどこれが妙にうまい。どうしてうまいのかよくわからないけど、じんわり優しく、胃袋に染みるようだった。滋養をつけて写真の現像に入る。終わったのは4時前だったか。
2016年6月9日9時57分 長崎県長崎市 上町6-7
朝食は、長崎の名物であるミルクセーキ。長崎のミルクセーキはカキ氷のような出で立ちだ。長崎駅から徒歩5分くらいにある「銅八銭」さんへ。
おしゃべりが好きな奥さんが一人で切り盛りをされている喫茶店で、ミルクセーキを作るミキサー以外は年季ものだ。ミキサーの中に氷、砂糖、蜂蜜、卵黄を二つに、確かミルクも入っていたか。それをミックスしていく。昔は子供が熱を出した時に卵酒代わりに飲んだのだそうだ。なるほど滋養がつきそうだし、卵酒より口当たりもいい。
ミルクセーキをつつきながら「サッカーを見に来たのです、長崎では盛り上がってますか?」と聞いてみる。こういうのは地元の人に聞くのが一番いい。奥さんは「長崎県民は新し物好きだけど冷めやすいし飽きっぽいのよ」と笑っていた。なので飲食店も続けるのが大変なのよと、今度は少し苦笑い。こんなにおいしいものを出していても大変なんだな。
2016年6月9日12時10分 長崎県長崎市 万屋町5-9
そうして、茶碗蒸しと蒸し寿司で有名な「吉宗」(これで「よっそう」という)さんで昼食後、最後の目的地である「dico appartment」さんへ。映画館の上にある、こじんまりとしたカフェだ。俺はここのフレンチトーストが一番好きで、原田宗典風に書けば「西早稲田dicoのフレンチトースト同好会」の会長になるほど気に入っている。
実は去年長崎に遠征した時、ここにカサを忘れていた。その時はメールで「捨てておいてください」と連絡したのだけど「またいらっしゃると思いますから、大事にとっておきますね」と返事をいただいた。このカサを、優しく温和なマスターから受け取るのが最後のミッション。
フレンチトーストは変わらずにおいしかった。きちんと焼いたパンを、きちんとした乳液に浸し、サイコロ状のそれをきちんとフライパンで焼いていくと、このなんでもないものが黄金色に輝く。
「V・ファーレンはね、走り負けないでしょう?あれ、国見高校のサッカーに通じるところがあるんだよ」とマスターが話してくれた。長崎を指揮するのは国見で鍛えられた高木琢也氏、小峰さんのメンタリティは受け継がれているのだな、それで、フィジカルに長けた永井龍が覚醒したのかと納得した。
長崎はいつも穏やかで優しい。J1でぶつかり合えたらと切に思う。カサは、持って帰らなかったほうがよかったかもしれないな。
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