6/07/2020

サポーターがクラブのためにできること #cerezo #cerezo企画部 #photo

サッカー観戦ができない日々


サッカー抜きの日々がこれほど味気のないものだったとはわからなかった。試合の写真を早く現像したいという一心で長居に部屋を借り、トップやレディース、ガールズの試合を追いかけ続けていた。その時間がそっくりそのまま空白になった。

この空白の中に「サッカーが観たい」「サッカーが撮りたい」という気持ちが詰まってしまい、ただただ苦しかった。


他クラブでは、すでに年間パスポートの払い戻しを始めているところも多い。それは「今年は今までのような試合観戦はできないだろう」というクラブの意思表示でもある。

ジリ貧のクラブが多くある中で、年パス払い戻しは苦渋の決断だったろう。それでもサポーターに誠意を見せようとする姿勢には首を垂れるしかない。異常事態の中でも最善を尽くそうという姿勢は否定されるべきではない。

COVID-19(コロナウイルス)と共生する社会


さて、Twitterを見ていると「早く元通りになってほしい」という声をよく聞く。けれど、多分だけれども、そんな日はやってこない。COVID-19と共生していく世界ができるまでは、ずっとこのまま息苦しい日々が続くだろう。

もし「元通りの世界」に戻ることができるならば、三つの要素が不可欠だ。一つに「ワクチン」二つに「集団免疫」三つ目は「差別意識の変化」だ。

ワクチンはみんなが分かっているとして割愛する。集団免疫の話から始めよう。平たく言えば「一度COVID-19に感染し、抗体を得た人たちが増える」ということだ。コロナウイルスはK型、S型、G型と三つの型があり、K型の免疫を持っていると最も強烈なG型に罹患しにくいとか、そんなことが言われている(まだ裏付けができていないので推測でしかない)

その仮説を読んでみたけれど、日本人は中国からの観光客からK型のウイルスを得てしまい、知らず知らずのうちに免疫を獲得してしまったらしい。安倍総理がギリギリまでインバウンド(海外からの観光客に対するアピール)を期待していた愚策がいい方に転がった。

すでK型の免疫ができていた日本人は、凶悪なG型ウイルスに罹患しても重症化したり死亡して利する率が低かったのだ。



後は「差別意識の変化」だ。地方ではコロナウイルスに罹患した人間の住所や家族構成、どこに立ち寄ったかまでハッキリとバレてしまい、罹患者の家族はよその土地に移るしかないそうだ。

今はまだワクチンもなく、集団免疫などという言葉も浸透していない状態ではあるけれど、それにしたってひどい。「村八分」は令和の世でも健在のようだ。

ワクチンができて、誰しもが「サーセン、コロナにかかったんで休みます」「仕方ねえな、大事にしろよ」と言える空気感があれば、日本の現状をより細かく理解できるのだけれどね。

これからのサポートを考えよう


さあ本題に戻ろう、応援の件だ。

最初の数試合は無観客だとして、その後も何かしらの入場制限はかかるだろう。普段通りの応援ができない中でスタジアムに来られたサポーターは、どうか真摯でいてほしい。

きっちりとマスクをつけ、クラブの意向に反せず、許されている応援方法の中で最善のサポートをしてほしい。そして、サポーターから一人も陽性患者を作らないよう尽力してほしい。

そうすれば、サポーターの立ち居振る舞いは他のプロスポーツに影響を与える。「Jリーグのようにしていれば大丈夫なんだ」という規範にもなる。

日本のプロスポーツを、俺たちJリーグから変えてやろう。そうしてスポーツ観戦が当たり前の世の中を作ろう。それこそがJリーグにとっての、応援しているサポーターにとっての、本当の本当の勝利になるのだから。


8/26/2017

2017明治安田生命J1リーグ 第23節 磐田 1vs1 C大阪 #cerezo #photo #diary

鹿島戦の日に、磐田戦の話をするかね……。まあ、許してくれ。


磐田市の西部には今之浦川という川がある。その支流は小さいものだが、河岸段丘を形成し、川の西岸はダラダラと坂が続く住宅街になっている。東岸にはイオンタウンとセブンイレブンが一件、スイーツショップと藪、残りは軒並みヤマハの関連施設。ヤマハスタジアムはヤマハの体育館やら本館やらが立ち並ぶ土地の隅に、そっと申し訳ない様子で佇んでいる。

8/11/2017

2017明治安田生命J1リーグ 第21節 清水 3vs2 C大阪 #cerezo #photo #diary


夏の夜は、頭がぼうっとする。ピッチ上の誰もが同じ状態だった。選手も、ベンチも、熱帯夜の悪い夢の中で、ジタバタともがき苦しんでいるようだった。

クーラーの効いた部屋の中ではわからない「何か」が、セレッソの意識を鈍麻させていたのかもしれない。精密機器のような守備組織は、わずかの狂いで全てが瓦解する。7月から向こうのリーグ戦、FC東京に3-1、柏に2-1、浦和に4-2、ガンバに1-3、札幌に3-1、そして清水に2-3。8試合連続失点で11失点を献上している。直近の3試合の7失点は全て、強かったはずの後半に失点している。

スターティングラインナップ


GK、キム・ジンヒョン。DF、右から田中裕介、マテイ・ヨニッチ、木本恭生、丸橋祐介。MF、ソウザと山口蛍、二列目右には水沼宏太、左に柿谷曜一朗、トップ下には山村和也が復活した。FW、杉本健勇。

リザーブ、丹野研太、松田陸、ケガ明けの山下達也、関口訓充、福満隆貴、秋山大地、リカルド・サントス。

丸橋を釘付けにしたミッチェル・デューク


セレッソも清水もシステムは4バック。4-2-3-1と4-4-2の違いはあるが、守備時のセットは4-4-2で同じ。セレッソ、ユン・ジョンファン監督も、清水、小林伸二監督も、守備に一家言ある人物であり、同時に対戦前のリサーチをしっかりやってくる人物だ。よく似ている二人の監督と、それを具現化する22人がピッチに立ち、詰め将棋のような90分か始まった。


小林監督が仕掛けた策は、丸橋を攻め上がらせないことでセレッソの左半身を麻痺させよう、というものだった。186センチの清水MFミッチェル・デュークを178センチの丸橋に当てて、空中戦を仕掛けてきた。丸橋が動けば柿谷が連動し、そうすれば連続試合得点中の杉本へイキのいいパスが出て来る。だから、攻守のキーマンである丸橋を集中して狙っていた。キーパーからのフィードは全て、マッチアップするミッチェル・デュークに合わせるようになっていた。セレッソの攻撃の初手を封じることで、全体が瓦解するのを防いでいたのだ。


セレッソ対策と、対策ではどうにも出来ないセットプレー


小林監督のセレッソ対策は、攻撃においても至極明瞭だった。攻撃はサイド中心。ボランチ、FWの2枚はフリーで受けてもできる限り長くボールを持たない。終始徹底されていた。


セレッソの守備の肝は縦横にコンパクトな4-4-2のブロックで、ボールホルダーとは逆サイドのプレーヤーのマークを外すことで無駄な動きを減らす。ブロックに入ったボールは選手が密になり奪う。それを逆手に取っていたのだ。

ボールホルダーのサイドと逆サイドの選手がフリーになれば、センターバックやボランチを経由して必ずそちらにボールが回った。セレッソは約束通り、そのサイドにブロック全体をズラす。10人のフィードプレイヤー全員が、10メートルくらいの短いジョグを繰り返す。

それが緩慢になり、少しでもスキができれば、ボランチ(彼らは杉本、山村のトップと、2列目中央のソウザ、山口の間に入っていた)にボールが入り、素早く前線にリンクした。セレッソを意識した守備、セレッソを意識した攻撃が、セレッソの選手全員のスタミナを奪い続けた。


それでも、先制点はセレッソだった。セットプレーは、相手が「わかっていても止められない」オプションのひとつだ。セレッソは完敗を惜敗に、惜敗を同点に、同点を勝利に導くためにこれを有効活用してきた。前半24分、押し込まれ続けていたセレッソにとっては大事なコーナーキックを山村が決めた。審判も審議をするような微妙なものだったが、それでも苦しい中の先制点は千金の価値があった。

続く33分にもセットプレーから木本が決めた。復帰したての山村、そして山村、山下が抜けた時に屋台骨を支えた木本がゴールを決めたことで、セレッソはいい流れに乗るかと思われた。しかし清水は、セレッソが嫌がる攻撃、セレッソが嫌がる守備をし続け、反撃の機会を虎視眈々と狙っていた。流れの中からのプレーは清水がイニシアチブを取り続けていたから当然ではあるけれど……。

悪夢のような45分


セレッソは後半4失点した。1点はオフサイドの判定に救われたが、PKを奪われ、ファインゴールを2度食らった。偶然ではない、必然としての結果だった。


前半、酷暑の中でボールを回され続けて、セレッソのフィールドプレイヤーの思考は鈍麻していた。体が疲れれば心も疲れる、判断のスピードが遅くなり、ボールがブロックに入った時の反応が少しずつ遅くなっていった。北川航也の2ゴールはどちらも素晴らしいものだが、彼がボールに触れた瞬間、誰もアプローチにいってはいなかった。キム・ジンヒョンを責めるにはあまりにも酷な状況だった。

同点ゴールのリプレーを食い入るように見る山下

ベンチも手をこまねいていたわけではない。2-2の時点でパンクしていた柿谷とソウザを下げていて、同点のタイミングでリカルド・サントスを加えようとしていた。しかし、リカルドがベンチの指示を受けている間に3失点目を喫した。全てが後手に回ってしまった。

もちろん、勝つチャンス、引き分けるチャンスがなかったわけではない。後半立ち上がりに水沼が抜け出した時、柿谷が抜け出してヘディングをした時、終盤のパワープレーで木本がシュートをした時、どれかが決まっていれば……。しかし、現実は違った。


苦難の時を、乗り越える試練に変えて


セレッソは敗れ、暫定首位の座を鹿島に明け渡した。勝ち点差は現在2だが、鹿島は1試合多く試合を残している。13日の川崎戦に勝てば勝ち点差は5に開く、過酷な現実だ。それでも、チームを立て直す機会はある。シャーレを掲げるチャンスも、まだまだタップリと残っている。だからやるんだ、最後の最後まで。選手だってそう思っているだろう、サポーターが嘆いていてどうするというのさ?


口を真一文字にサポーターに応える。やり返す子供じみた健勇は、もういない