11/17/2013

第93回天皇杯 4回戦 C大阪 1vs2 鳥栖 前を向きやがれ。 #cerezo #photo

得点者

前半5分 金井 貢史(鳥栖)
前半22分 エジノ(C大阪)
後半42分 豊田 陽平(鳥栖)


得点差以上に完敗だった。だから、何も書きたくなくて、ふて寝でもしたいんだけど、それじゃあ何にも進歩がない。今目で見たことを記録して、記憶して、次に活かす。それしか前に進む方法はない。なら、そうする他無いじゃないか。


スタメンとベンチ。代表で不在の柿谷曜一朗と山口螢に代わってはSULで2得点したエジノ、安定感に長けた横山知伸が入る。椋原健太と秋山大地がベンチ、ケガだった黒木聖仁も帰ってきた。


システム的にはいつもと変わらずで、手慣れたものだと思っていた立ち上がり、鳥栖お得意のロングスローから失点してしまった。これは痛い誤算だった。


この試合、鳥栖は鳥栖らしさをうまく出せていて、セレッソはセレッソらしさを殆ど出せないままだった。それは、ふたつの鳥栖のセレッソ対策がはまってしまったからだ。

ひとつは、余程の劣勢でない限り前二人がハイプレスで扇原貴宏、横山のダブルボランチに圧をかけ、自由に展開させないこと、展開させても一拍遅らせること。もう一つは、ボールをサイドに追い込んで奪い、素早く斜めのパスでこちらの逆サイド深くにボールを置くこと。



写真を整理していて再確認できたのだけど、ダブルボランチは前を向くと必ず相手の前線二人、早坂とキム・ミヌだったか、彼らに圧をかけられていて、一旦最終ラインかキム・ジンヒョンのところまでボールを回したり、ボランチのもう一方にボールを預けたりして、テンポを遅らせられていた。少しの時間であるけれど、その間に鳥栖は帰陣して4-4-2のブロックを作れる、セレッソは攻撃の選択肢が減る。それで随分と難儀をした。

もう一つ、サイドに追い込まれてボールをとられ、逆サイドというのはこういう感じだ。


セレッソは左サイドの攻撃が得手のチームで、このような形になりやすい。南野拓実か丸橋祐介がサイドで突破して、そこから最終の崩しに入る形が一番スムーズだ。そうしてそこが手詰まりになった時のために、シンプリシオなり横山なりを経由して酒本憲幸にボールを渡す準備をしつらえる。これが定石なのだけれど、そこを周到に狙われた。

南野、丸橋のところで人数をかけ、ボールを奪うと、そこから酒本の裏のスペースを徹底的に突いてくる。反対に右サイドで追い込めばまた対角に左サイドの裏にロングボールを入れる。鳥栖はもともとハイボール、ロングボールに強い選手が揃っているので、収まりやすい。セレッソはその分DFラインを上下動させねばならず、スタミナを奪われることになった。


センターバックが釣り出されると真ん中が手薄になるし、サイドバックが下がっても体勢不利だしで、厄介だった。

セレッソとすればロングボールを入れる出し手にプレスをかけて精度を落としたり、FWや攻撃的な位置にいる選手が上下動してボールを引き出したりしなければいけないのだけど、それができずに体力をひたすら奪われる形になった。


もし鳥栖が夏場に同じことをすれば、ハイプレスで走り回る分後半足を止めることになったろう。けれど、今は体が一番動きやすい季節で、ついぞプレスの激しさが収まることはなかった。


前半の得点機と言えば、エジノのフリーキックと南野のギリギリからの飛び出し、後は酒本のダイレクトボレー、この三度だけで、一番決まらないと思っていた(失礼)エジノのフリーキックが見事に刺さった。


セレッソにとってこれ以上ない幸運で、鳥栖はこの後の時間少し混乱していた。南野の飛び出しもそのすぐ後にあったわけで、たたみ込めていたらと恨み節が出る。


それでも、セレッソとすれば試合開始直後の5分間に奪われた「最悪の失点」から同点に持ち込めた、評価すべき内容だった。後半に修正が加われば、流れは変わると信じられた。

ただ、結果だけ見れば、修正はかけきれなかったのかと思う。惜しいシーンは作れたのだけど。


柿谷、山口螢がいない中、セレッソを牽引していたのはシンプリシオだった、これは間違いない。ボールを奪われず、逆にボールを引き出し、流れを変える大車輪の働きだった。ボランチが満足に動けない中、シンプリシオだけが確実に攻撃の起点になっていた。

試合とは関係ないけれど、セレッソは来期、彼と契約を延長しないと聞く。そうすれば、誰が攻撃の起点となり、ボールを保持し、チームの核となるのか不安になる。年齢的なものを考えれば、そう遠くない未来に世代交代を余儀なくされる存在ではあるけれど、それを差し引いても、大物外人を連れてこないと割に合わないなと感じる。


もう一人、右サイドの攻撃的プレーヤー枝村はオフザボールの動きに長所があるタイプで、「水を運ぶ」存在ではない。それは最初からわかっていたことで、結果的には流れから取り残される時間が長くあった。良い悪いで言うなれば、悪い時の彼だった。

いかなシンプリシオでも独力で試合の流れを変えるのは難しい。大勢を変えるためには攻撃しかないと踏んだレヴィー・クルピは、後半19分に楠神をピッチに入れる。


シンプリシオがボランチに落ちて、南野がエジノの下、楠神は左サイドに入った。



南野が本来ポジションである前線に入り、そこから攻撃をスタートさせられる、楠神が相手の運動量が落ちるであろう時間帯にドリブルで仕掛けられる。ふたつの効果が期待されたけれど、楠神は得意のドリブルを狙われていたように見えた。一度二度いい突破があったけれど、その後はドリブルの一歩目を突かれてボールをロストし、危険なカウンターを仕掛けられる(セレッソにとっての)急所になってしまった。

そうして、時同じく鳥栖は温存していた豊田陽平を入れていた。


豊田はやはり、この中にあっては格が違うストライカーだ。山下達也でも、競り合いを五分に持っていくのが精一杯。これではセレッソは苦しい。「分かっていても防げない」これは柿谷の飛び出しやトラップにも言えることだけど、これ以上ない武器だ。

それでも、鳥栖は中盤のダイナモである水沼宏太を下げていて、攻撃を「作る」部分が弱まっていた。セレッソはここに杉本健勇を加えて、主導権を握りにかかった。

後半29分

杉本はエジノに比べると、断然ボールの収まりがよく、パスの出し手としても優れている。しかし、ストライカーとしては未成熟な部分が多分にある。今日はそのストライカーとしての覚醒を期待されていた分、物足りない内容になってしまった。ゴール前までは運べるけれど、フィニッシュで迷いや手数が積もってしまい、ノッキングする悪いクセが出た。

攻撃はしている、惜しい、後は決めるだけ、この流れで何度失敗しただろう。ベストアメニティスタジアムでやってしまった失敗を、セレッソはまた繰り返すことになった。試合の勘所である残り5分になってボランチの位置でボールロスト。2対3の局面を作られて、角度がない位置とはいえ豊田をフリーにしてしまった。


この時のジンヒョンの応対に不満がある人もいるようだけれど、彼はリーグ最少失点チームの守備陣の一員で、これまで何度も決められたと思った1対1を止めてきた選手だ。個人的には、責める気にはなれない。


その後は、お決まりの負けパターンにはまってしまった。攻めに焦りが出て無理なパスやドリブルをしかけてカウンターを食らう。よく3点目を取られなかったことだ。そうして、アディショナルタイムの4分も見せ場少なく、セレッソは元日国立の夢を諦めることになった。


悔しくないのかと聞かれれば、それは悔しい。特に、自分の長所を潰されると途端に窒息する、流れがいい中で慢心してミスをする、その悪癖を直しきれないセレッソというチームの不甲斐なさに悲しくなる。

それでも、このチームはリーグ屈指の堅守を誇り、海外組が多数を占める日本代表に二人の選手を送り込み、リーグ5位で希望の芽を持ったまま、まだそこにいるチームなのだ。そして、俺が、多くのサポーターが愛してやまぬチームなのだ。大阪でも関東でも、多くのサポーターが声援を送る存在なのだ。見捨ててどうしよう?諦めて何の得があろう?愚痴や仲間への攻撃で何が生まれよう?

あと270分。それがレヴィー・クルピと俺達に与えられた残り時間だ。この270分の間に上位3チームと当たる。ACL、優勝、まだ可能性があるならば、どれだけ目を背けたいような試合でも、しっかりと記憶し、フィードバックし、前に進もう。

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