天皇杯の決勝は、俺がまだ生まれる前に関西圏開催から国立開催に変わっていたんだそうだ。それから後、セレッソは三度元旦決勝を味わっているけれど、平塚(現湘南)、清水、磐田に敗れてタイトルを手にしていない。
今年は市立吹田サッカースタジアムでの開催で、運良く定価で(転売屋に利益を与えることなく)チケットを得られた。そこでデートの予定もない俺は、午前中「この世界の片隅に」を観て号泣した後に、天皇杯決勝を見物して来た。
ムダのないスタジアム。
まず市立吹田サッカースタジアムについて。素晴らしいインパクトを与えてくれた。いろんな方々がご指摘の通り、お金がかかってないなと感じるところはあった。けれど、総じて見れば、とてもいいスタジアムだ。
先ずお金がかかってない場所から。例えば、ゲートから下層スタンドコンコース、上層スタンドコンコースに至る階段は金属製で、歩くとガンガン音がする。それから、案内板のようなものは全てコンクリート製の柱に直書きになっていたりする。
そりゃあ階段はしっかりした作りがいいし、案内板もキッチリしつらえてあればいい。けれどそれは、サッカー観戦において特段必要なものではない。
上層スタンド最後列から |
そう、サッカー観戦に必要な、スタンドの角度であるとか、座席の座り心地、コンコースの広さ、そういうものはよくよく練られていて過不足がない。
例えば、俺が観た上層スタンドでもピッチの手前側がしっかりと観えるようになっている。逆に、観る必要がない下層スタンドは一切観えない。そういう「やる所はきっちりやる」感じが心地いい。
下層コンコースから |
不満があるとすれば……三点くらい。トイレの数は、恐らくJリーグの基準値を満たしているのだろうけど、満員だと用を足すにも苦労する。女性ならなおさらだろう。
売店に関しても少し面倒臭い、他のスタジアムにあるようなフードコートはなく、全てスタジアムの下層スタンドコンコース内にある。だから、お目当てのスタグルを得るためにコンコースを半周するなんてこともある。
あと、細かいところではビジョン。ノエビアスタジアムのように、メインスタンド上層南側と、バックスタンド上層北側に二面あるのだが、時間表示はバックスタンド上層北側のビジョンにしかなく、下層スタンドのホームサポーター席の上の方からだと、時間経過を確認することができない。
まあ、去年までJ2のスタジアムをさまよい歩いた人間からすれば、夢のようなスタジアムであることに間違いはない。駅からスタジアムまで遠い?町田は臨時便が無いと、竹生い茂る山野を1時間弱歩くぞ?ビジョン?お前本城陸上競技場行ってみるか?子供たちが手作業で得点のボード入れ換えるんだぞ?
J1仕様の応援。
試合に関して。やはりJ1の、ここまで登ってきたチームは違う。川崎の小気味好いパス回しは、そうそう、こんな風に繋がったら楽しいよな!と興奮したし、鹿島のそれをうっちゃる強かさも、相変わらずだと感じた。
そして、ゴール裏にはさも当然という風に満員のサポーターがいる。恐らく5000人弱は入るスタンドに、みっちりと人がいる。スタジアム全体では34166人。ゴール裏の上層スタンドには若干空席があったけれども、4万人収容のスタジアムで、緩衝帯を設けた状態では満員と言っていいだろう。(セレッソもセレ女ブームの時は25000人くらいがアベレージだったんだけど…)
川崎は初タイトルに向け、サポーターが一丸となり全力で声を出していた。そう、全力で。
対する鹿島はタイトルを取るためにどんな応援をすればいいのか、その強弱がついていた。
だから、総じては川崎の声の方がよく出ているのだけど、ここが勘所という場面では鹿島の応援が大きくなった。鹿島はサポーターも勝ち方をよく知っている。
こういうスタジアムの中で、こういう雰囲気の中で、こういうレベルのサッカーをしなければ勝てない、生き残れない。J2の隅っこで、やっと切符を手に入れ、やってきたステージは、思っていたより厳しそうだ。
蛇足
セレッソもキンチョウスタジアムの改修に乗り出しているけれど、50億円でバックスタンド、南北のゴール裏を全て設えるのはかなり無理がある。
フクダ電子アリーナ(19781人収容)でも、全体で81億円かかっている。今年開場するミクニワールドスタジアム北九州(15066人収容)でも107億円。市立吹田スタジアム(39604人収容)は更地の状態で、周りの道路も資材が運びやすい広さが確保されていて140億円。下町のど真ん中にある、既存の施設が密集する場所でどれだけやれるだろう?スタンドの解体だけでもかなりの費用がかかりそうだけど……。
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