ド派手なセレモニーと堅実な試合
冬の終わり、春間近のヤンマースタジアム長居には33208人もの観衆が詰めかけた。花火がガンガン打ち上がり、選手紹介ムービーの前にはチームのレジェンドでもあるユン・ジョンファン新監督をリスペクトするショートムービーまで用意された。三年ぶりのJ1リーグ公式戦は大観衆の中、ド派手な演出から始まった。しかし試合内容に関してはとても堅実だった。
スターティングラインナップ
システムは純然たる4-4-2。GKキム・ジンヒョン。DF右から松田陸、新加入のヨニッチ、山下達也、丸橋祐介。MF右から水沼宏太、ソウザ、山口蛍、関口訓充。FW柿谷曜一朗と杉本健勇。リザーブは丹野研太、茂庭照幸、田中裕介、丸岡満、山村和也、秋山大地、リカルド・サントス。ケガの清武弘嗣はまだトップコンディションではなくベンチ外。去年活躍した清原翔平、澤上竜二といった選手もベンチ外となった。
堅実なユン監督のサッカー
ユン・ジョンファン監督は長くサガン鳥栖を指揮していたので日本のサッカーを熟知している。ただ、フィジカルの強さや走力に強みを持つ鳥栖とテクニックで押すセレッソとはカラーが真逆で、その辺りをどうするのか、とても興味があった。
大きな変化で言えば、去年の、大熊清前監督のサッカーと比べて、今年のセレッソは長い距離を走るスプリントがとても少なかった。自分の受け持つゾーンを厳守し、そこから飛び出すことをよしとしなかった。
例えば、去年の柿谷は自分がボールを奪われると、システムだとか守備の決まりごとだとかを無視して、中盤や最終ライン手前まで相手を追い、身を投げ出してクロスやラストパスを防いでいた。それは前監督が口酸っぱく話ししていたガッツだとか、もう一本前に出るがんばりを体現したものだった。
対して、今年のセレッソは4-4-2の組織が乱れることがなかった。自分の受け持っているゾーンに敵が入れば責任を持って追う。細かなスプリントはしょっちゅうある(だから、総走行距離は長くなる)しかし、相手やボールが自分のゾーンを抜けた時は他の選手にカチッと受け渡し、もう一度自分のゾーンの中心に戻っていく。なので、ピッチ内を長く走り回る必要がなくなったのだ。
がんばりという部分では、去年の方がよくやっていると言えたんだろう。けれど、組織的な守備を90分間続けるのであれば、今年のようなハッキリとしたルールのあるサッカー、無理をしないサッカーの方がやりやすいはずだ。
事実、個々の力量で言えばJ2のどのクラブよりも秀でているはずの磐田を相手に、セレッソは一つのゴールも許さなかった。危険だなと感じるシーンは中村俊輔が蹴るセットプレーと、アダイウトンが打った反則もののミドル程度だ。
課題の残る攻撃
守備では4-4-2のフラットなラインは強烈に機能した。反面、攻撃では難しいと感じる部分が多かった。
セレッソが最も簡単にゴールを奪う方法は、柿谷にフリーで、ゴールの近くでボールを渡すこと。そこから逆算すれば攻撃の組み立てがわかってくる。
だがこの試合では守備が第一になっていて、攻撃は守備が崩れるような、アンバランスな動きは制限されているように感じた。
こういう中ではサイドバックとサイドハーフの動きがとても大事になるのだけど、関口、水沼の両サイドハーフには「もう少しやれたのでは?」という不満が残る。水沼が後半立ち上がりに脚を痛め、丸岡が交代出場したが、同様の感想だ。
今日のメンバーの中には攻撃を組み立てられる選手がいなかったので、余計に不満を感じたのかも知れない。「元セレッソの選手だったから」というだけで清武を連れ戻したのではなかったんだと今日ようやく気がついた。
もうひとつ言いたいのは杉本の使い方だ。2トップとして起用され、ハイボールの競り合いを任されていたが、彼は(個人的な見立てではあるけど)純粋なセンターフォワードではない。パス出し、気の利くプレーができるかわりにガツガツとした当たりを嫌う、どちらかと言えば中盤の選手に近い存在だ。
だから、彼の動きを理解する柿谷が終盤、中盤に下がると無力化されてしまったのだ。この辺りはユン監督が気づけば修正されると思うけれど。
浦和戦に向けて
次節は六万の観衆が詰めかけるアウェイ浦和戦となる。J2時代には味わうことのできなかったシビれるシチュエーションだ。今の、堅実なセレッソであればヒドい内容にはならないと思うけれども、逆に爽快な試合にもならないだろう。胃に鈍痛を感じながら、埼玉スタジアムで新しいセレッソを追いかけていきたい。
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