一年前の2015年5月、俺は熊本のうまかな・よかなスタジアムにいた。熊本対セレッソの試合を撮るためだ。
俺の田舎は長崎だから、そのあたりの土地勘や風土への慣れはあるけれど、他県の雰囲気までは知らなかった。福岡、北九州、長崎、大分、熊本と5回九州に行ったけれども、どこも特色のある素晴らしい土地だった。
熊本サポーターはみな優しく、待機列の作り方やオススメのスタグルを教えてくれた。開門時刻が近づいてくると、小さな娘さんと手を繋ぎあいた手でビールの500ml缶を持ったお母さんがやって来て、ああ、火の国の女は強いんだと実感したりした。
スタグルも素朴ながら愛情があり、どれもうまかった。いくらスポンサーだからとはいえ、白岳のロックが300円という異常な価格設定なのにもお国柄を感じたな。
サポーターという生き物は、サッカーがそこにあれば、どんなに離れていても足を運ぶものだ。そうしてその街の人に会い、その街のものを食べ、その街の空気に触れる。それはとても大切なことだ。
人間の想像力なんてものはたかが知れていて、知らない誰かの痛みとか苦しみなんて全然わからないものだ。けれど、一度その土地に足を運んだ人間ならその痛みのわずかでも感じ取ることが出来る。あのお母さんは大丈夫かな、あのおじさんたちは大丈夫かな、そういう感情がわいてくるものだ。
どうか一日でも早く、熊本にあの笑顔が戻りますように。下らない街の下らない部屋の中からでも、願いが届きますように。
昨日の試合も募金をしたし、今日もする予定。うまくいけばいいな。
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