スタッツの上ではセレッソが圧倒したように見えるけれども、大分は狙ってこの図式を作っていたフシがある。新生キンチョウスタジアムの杮落としは評価しづらい試合になった。
スタメンとベンチは下図の通り。
エジノ、ブランコがスタメンから外れ、代わりに清水戦でいい動きをした枝村と杉本健勇が入った。その他は前節と変わらず。
後半のラスト20分以外、おおよそ70分間は、通してセレッソの攻撃は機能していた。特に懸念されていた2列目から前の組み立てはよくなっていた。
理由は2つある。一つはセレッソ自身に由来するもの、今一つは大分の狙いからくるもの。
セレッソは2列目に山口螢と枝村匠馬を起用した。2人とも運動量があり、ボールを運ぶ能力に優れている。特に枝村は他の選手と比べて連戦の疲れもなく、いい動きをしていた。彼らとシンプリシオが大分のワンボランチ宮沢の両側に空いたスペースにうまく入り込み、前線までボールを運んでいた。
杉本健勇も無難な出来だった。彼らしく、時に下がり、時に前に出てボールを引き出し攻撃にリズムを作っていた。このあたりは収穫といっていい。
対する大分は、他のチームが行うセレッソ対策と真逆の戦いを仕掛けてきた。これがこの試合を特徴付ける選択だった。
大抵のチームは、セレッソの攻撃の出発点である両ボランチ、シンプリシオと扇原貴宏にプレッシャーをかけて攻撃を遅らせたり、精度を落とさせたりする。
しかし大分はこの2人をほぼフリーにさせ、代わりに守備時には前線の高松大樹、森島康仁以外を全員低い位置まで戻らせた。そしてこの8人を4-4の2ラインではなく5バック、1ボランチ、ボランチの両側に1枚ずつという変則的な形に置いた(変則的なのは4バックと比べて、ということで、大分では普段からのシステムなのだけれど)。
中盤のラインでは4対3とセレッソが数的優位になる。また、柿谷曜一朗と杉本健勇は必ずどちらかが下がったり流れたりするので、大抵の時間帯は5対3になる。なので、中盤まではスムーズにボールが運べたのだ。しかし、そこから先にボールが入らない。
今日のセレッソは中盤から前の選手8人中6人がユース出身、どちらかというと細かいパス交換から相手を崩すことを得意とする。しかし大分の最後のラインが普段より1枚多くなっているので、最後の仕掛けが難しいものになっていた。両サイドバックが上がってクロスを上げても中には高さを生かすプレーヤーもおらず、アーリークロスを流し込むスペースも無かった。この最終ラインを統率していたのがセレッソではなかなか起用されなかった阪田章裕だったのはなんとも皮肉だ。
そうしてセレッソの攻撃が網にひっかかると、ボールは一気に大分の前線まで送られる。ここには高松大樹、森島康仁という高さと強さを持った2枚が控えている。森島康仁の凄みはセレッソのサポーターとして知っていたつもりだったけれども、数年ぶりに生で観た森島康仁は、以前とは比べ物にならないほどたくましくなっていた。
後半立ち上がりに大分がつかんだ1対1の好機もこの流れで生まれている。回数こそ少なかったが、大分は大分らしい攻撃でセレッソを苦しめた。
大分のように引きこもる相手に対して崩す方法はいくつかある。セットプレー、サイドからのクロスと高さ、それから大きく速い展開に、ミドルレンジからのシュート。しかし現状のセレッソにはセットプレーと高さという要素はなく、残りの2つ、大きな展開とミドルシュートもあまり得手にはしていない。さらに不味いことに、この2つを武器にしている扇原貴宏を後半17分で下げてしまった。
後半17分、扇原→南野 |
この交代でセレッソはより前に密集するようになり、大分の守備をやりやすくさせてしまった。柿谷クラスの人間がいてもこの密集を抜けるのは容易ではなかった。
後半23分には杉本健勇、枝村匠馬も下げて、エジノ、ブランコを入れる。
2人はこの使われ方であれば、先発よりかは幾分かやりやすそうにしていた。特にエジノはそれなりのシュートを2本放っている。大分のようなフィジカルでガツガツと当たる相手には対抗できそうだ。
ラストの藤本退場は余計だったし、不完全燃焼な部分も多々あった。大分田坂監督の狙いにはまってしまったのも痛い。もう少し扇原を引っ張っていれば、もう少し早くシュートを撃っていればという後悔もある。
それでも、今までの停滞感から比べれば、まだ光明の見えた試合だったと感じている。これを続けていければ(続けていく精神的な余裕や環境があれば)いい結果は直に見えてくるだろう。それを我慢し続けられるか、信じ続けられるかがポイントだ。
個人的には、オフにデカモリシを獲りに行ってもらいたい。
返信削除今のセレッソにはあんなパワフルなFWが必要だから。