前半38分 カイオ(C大阪)
勝った。ただそれだけの試合。厳しい内容、動きの悪いチーム、収穫は少なかった。しかしそうした試合でもしっかりと勝ち点3を上積みできたことが素晴らしい。去年は一つ歯車が狂えば何もかもがうまくいかなかった、今は違う。
スタメン、リザーブ共に開幕から3試合変わらず。3バックがセンターを細かく入れ替えるのも、前3枚が即興演奏のように位置取りを変えるのも同じ。
ただ一つ違っていたのは今日の相手栃木の守備意識の高さ。決して個人技、体躯に秀でているわけではないが、チームの意識が統一されていて乱れが無い。ラインは思い切って高めにとり、密集を作る。ボールホルダーには必ず誰かがつく。時に二人、必要なら三人が食らいついてくる。ワンタッチパスで叩くかワンツーで抜けるか、瞬時に判断しなければあっという間に囲まれてしまう。試合の写真を整理していて画面に入っている栃木の選手の多さに気付き、改めて驚いた。
そうした密集であっても普段の香川、乾、カイオなら突破出来たはず。しかし今日は長く伸ばされたスリッピーな芝と疲労に苦しめられることになる。特に香川の重さが気になった。
香川には常時二人のマーカーがついていた。サポーターには見慣れた光景だ。そしてその二人をさっと置き去りにする香川の姿も、同じく見慣れているはず。だが今日はそれが無い。全く無いわけではないけれど(惜しいシュートも2本あった)本来の出来とはかけ離れている。目をつむっても繋がっていた乾やカイオとの連携も僅かずつ狂ってしまい、上手くいかない。
タイトなマークと低いポテンシャルが重なり攻撃はなりを潜めてしまったが、守備の安定感は相変わらず、羽田、マルチネスはいつものことのようにタフな仕事を片付ける。チアゴのおかげで最終ラインに躍動感がある。キム・ジンヒョンも少しずつチームにフィットしてきている。互いの守備が秀でていた為に前半は有効な攻撃が数えるほどしかないジャブの打ち合いになった。1本、乾がよい位置でシュートを放つがゴールを捕らえられない。
こういう時にカギになるのはセットプレー。今日唯一の得点も酒本のコーナーキックをカイオが上手くヘッドで合わせたもの。第1節では江添のJ初ゴールを呼び、第2節ではチアゴの決勝ゴールを生んだセットプレー、今日も大切な先制点の呼び水となった。
前半いい時間帯で得点を奪ったセレッソ、栃木もこれで攻撃にシフトせざるをえなくなった。しかしそれは遮二無二攻めにかかるというより、しっかりとしたロジックに裏打ちされたスタイルだった。上がった石神のウラを丁寧に突かれたおかげで彼は長居のピッチを忙しく上下動しなくてはいけなかった。もし今日の試合リザーブに尾亦がいたなら間違いなく途中で投入されていただろう。タフさが売りの石神も、終盤にはさすがにバテバテといった様子だった。長身FW若林が入ればその後ろにこぼれ球を拾うアタッカーがつく。3バックが冷静に対応したこと、相手のミスが続いたことでここは事無きを得る。しかし後半15分過ぎからは攻める栃木、守るセレッソという図式が固定されてしまい、なかなか流れを戻せない。
選手交代には慎重なレヴィー・クルピも重い腰を上げる。後半も好機を逃していた香川に代えて苔口投入。スピードスターにカウンターの切れと前線でのプレスを要求する。
結果的だけ見ればこの一手はあまり効果的ではなかったが、意図のはっきりとした采配だった。しっかり守ってカウンターへ、裏のスペースを生かして相手を押し下げる。乾、カイオ、マルチネスが監督の意図を具現化していた。時間を使い、あわよくば追加点で試合を決める構え(これに苔口が加わっていればより素晴らしいものになったのだろうけれども、残念ながらその機会は無かった)
残り時間が5分を切った頃にはしっかりと時間を使うプレーで憎らしい閉め方を見せる。相手ゴール近く、サイドにはってボールをホールド。コーナーキックでは枚数をかけずショートで針を進める。以前よりもずっとはっきりとしたプレーの切り替えで1点のリードを守りきった。
これで開幕3連勝。得失点差で愛媛の後塵を拝す事になったが、結果は残している。次節は中二日のタイトなスケジュールの上に香川が抜ける苦しい試合だが、ここでもしっかりと勝ち点を積み重ねられるなら、昇格に随分と近づけるのではないだろうか。
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