なんて、今時3流ドラマにも出てこないようなセリフ。もし、私がそう言われたらどうだろうと考えていた事がある「キミに決まっているじゃないか!」と言い切るか「今は大事な時期なんだ、キミだってわかっているだろう?もう少し大人になれよ」と諭してみるか。優柔不断だから、多分どちらともつかない、曖昧な答えしか言えないだろうなと、その時は思っていた。
「お前、家庭と仕事、どっちが大事だ?」
まさか実際にそんな事聞かれるとは思わなかった。つい最近の事だ。言った主は仕事上の大恩人、世間知らず(今でもそうだけれど)の私にいろいろとモノゴトを教えてくれた人だ。亡くなったオヤジに雰囲気が似ているものだから、宴席で思わず「オヤジ」と言って皆に笑われてしまった事もある。でもそれくらい恩がある人。
そんな人に問われた時、私は思ったよりも素直に
「家庭です」
と答えることが出来た。嘘偽り無く、そうだったから。ウソでも仕事ですなんて言いたくなかったから。辛い時に思い浮かべるのは、いつも家族の姿だけだったから。
答えを聞いた「オヤジ」は、少し満足げに笑って
「そうだ、それでいいんだ。家族ってのは、何にも増して大切なものさ、それを忘れちゃいけない。どんな時だって、間違っても、仕事です、なんて言っちゃダメだぜ」
と、私に噛んで含めるように言ってくれた。
人は生まれて死ぬまでの間に、たくさんの人に出会い、たくさんの人と別れるらしい。私も、多分そうなるんだろう。その中の一人に「オヤジ」がいてくれたことに、今はただ感謝するだけだ。いろいろついていない人生だけれど、人の縁だけはあいかわらずいい。
「オヤジ」いろんな事に気付かせてくれて、本当にありがとう。
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