12/21/2009

悪魔。

苦しくて苦しくてたまらなかったから、というのは、言訳。

僕は自分の意思で悪魔の話に耳を傾け、自分の意思で契約書にサインをした。サインを確認すると、彼はニタリと笑いながら知性と理性を噛み砕いてしまった。

DSC_95000101.jpg


 

刹那、僕の精神はパルブロ酸ナトリウムの分厚い壁を易々と飛び越え。真っ黒で醜い快楽の海の中に飛び込んだ。
心臓をむんずと掴まれ、鼓動は早い。口の中から飛び出しそうになるのを堪えるだけで精一杯だった。気持ちの悪い汗が流れ、恐ろしい思念が乗り込んでくる。気が狂いそうな悪夢の只中にいながら、脳内のシナプスは快楽物質をドロリ、ドロリと吐き出し続け、自制の箍を溶かした。細胞と細胞が触れ合っただけで痺れる様な興奮を覚える。
人工の安上がりな薬剤や、恐らく麻薬でさえ得られないような多幸感。何もかも思い通りに行くような気がした。金属物質でさえ、願うだけで捻じ曲げられるような、万物の命さえコントロールできるような、そんな気がした。昨日の僕なら、きっと神様にだって勝てたろう。
12時間経った今、ようやく正気と疲労が追いついてきた。延髄の辺りがジンジンとする。僕は何気ない日常に戻ってきたのだ。しかし二日前の僕と、今の僕は違う。悪魔はサインを持ったまま、まだ後ろに立っている。

0 件のコメント :

コメントを投稿