「日本でいちばん社員満足度が高い会社の非常識な働き方」という、タイトルもとても非常識な長さの本が評判らしい。実はオレも読んでる。難しい話が優しく書かれているから、一度手に取ると好奇心を煽られてサックリと読めるのがいい。
この本の著者である山本敏行という人は、平たく言うとIT企業の先頭を突っ走っているリーダーのような人だ。行動の一つ一つが計算されていて、それらは一見妙なのだけれど、よくよく考えると納得させられることばかりというのが、この本を読むとよくわかる。
面白いのは「実力主義」「冷たい」と思われがちなこういう業界の、その只中の人であるのに、文章の端々から人を大事にしようという強い意志が感じられるところ。カタガキがカタカナな人達は恐らく安価なテレビ会議システムや、ペーパーレスなオフィス、様々なツールの活用法に目を奪われるだろう。けれど、それらのキーに触れ、動かし、繋がり、利益や喜びを生み出しているのは、紛れもない人間なのだ。
例えば、この会社には「クビ」という制度がないらしい。自分がそこで活躍したいという意思がある限り、もしくは居心地の悪さに身を引かない限り、誰かに職を奪われることはない。
別に晒し者にするためにそうしているわけではない。その人の良いところ、その人が最も輝ける場所をとことん探し、見つけるのだそうだ。
「何を悠長なことを」
と思われるかも知れないが、今彼が率いている会社、業界のトップを走るといわれているその会社が順調に収益を伸ばしている、その幾らかは、そうして居場所を見つけ、力を発揮している人達によるものなのだ。
と、ここまで書けば、オレが何を語りたいかピンとくるだろう。どんな人間にも、居場所はあるのだ。歳をとったと言われたベテランストライカー、パスサッカーに合わないとポジションを奪われた経験豊かなセンターバック、天才とうたわれながら試合に出る機会を失ったゲームメーカー。セレッソはこの会社にとてもよく似ている。
ただセレッソにしてもこの会社にしても、オリジナリティあふれる存在であるが、決して巨大ではない。それが悲しくもある。こうした集団がスポーツシーンでもビジネスシーンでも、数多く見受けられるようになれば、日本人であることに、もう少し喜びを感じられるのだけれど。
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