アウェイも積極的に行くようになってから、意識していることがある。それは、例え相手チームであったとしても、素晴らしいプレーやセレブレーション、セレッソのサポーターとして眉をしかめたくなるような瞬間でも、とにかく撮ろうということ。それから、その土地々々の素晴らしさも必ず残しておこうということ。
J1にいると、アウェイは戦いだと感じる。プライドがあり、アウェイの洗礼があり、罵り合いの舌戦も過激さが増す。時々は暴力沙汰や差別、といてい許容できない出来事にも当たる。J2にだってそういうものが無いわけではない。むしろいまホットな「ぶちくらせ」の件はJ2のしがらみが引き起こしたイヤな事件だ。
ただ、いろいろ回っていれば、それは少数派、過激な考え方の持ち主たちの仕業だと皮膚感覚で分かる。J2では対戦相手は敵であると同時に尊敬すべき隣人なんだ。(J1が酷いという書き方になってしまったけれど、J1の「それ」も一部のサポの愚行だと知っているよ、スマン)
スタジアムで会う人は、おせっかいだなと感じるほどに温かい。敵のはずなのに「よく来たね」と迎え入れられる。敵がいなければ試合ができない、試合ができなければ自分たちが愛するチームも立ちいかない、それをちゃんと踏まえて笑っているのだと思う。
毎年収支報告が上がると、眉をひそめたくなる数字が並ぶ。そんなチームどうしが毎年2度会って、今年もなんとか生き残れているねと言い合う、そういう健闘のたたえ方もあるのだと知った。
金沢ではスタグルで牛串が売っていた。岐阜の飛騨牛串や福岡の串焼き、熊本の焼き物系や愛媛の鱧の串かつに比べると規模はこじんまりしたものだけど、串はボリュームがあり、歯ごたえも程よい。どこかの外食チェーンみたいにインジェクションビーフ(人工的に脂肪を添加した成型肉)なんか使ってない、素朴な味。ああ、なんかお祭りに来ているみたいだな、地元の人はこれ食って酒とか飲んで、試合に一喜一憂するんだろうなとか、想像が駆けまわる。
串は30前後だろうか、若くてごついお兄さんが焼いていた。お店の前には奥さんが立ってお客さんを招いている。そうして、お父さんの横にはまだ幼稚園くらいの女の子が立っている。彼女は輪ゴムを手に持って、お父さんが焼いた串をパックに詰めるお手伝いを一所懸命にしていた。
セレッソ戦は今年一番お客さんが来たと、駅にいた金沢の名物サポさんが笑っていた。だとすれば今年一番のかき入れ時だ。女の子の目も必死だったように見えた。
試合は雨にうたれるわシュートもうたれるわで散々だったけれど、帰りのシャトルバスに乗り場に向かう両チームのサポーターは呉越同舟穏やかなものだった。疲れているのも確かにあったけれどもね。
バスの待つ駐車場への道中に、さっきの牛串屋さんが店をたたんで帰り支度をするのが見えた。俺は思わず「よう稼ぎはりましたか?がんばってくださいね。」とお節介なことを言ってしまった。
そりゃあ今年J1に戻るのが最上に違いない。だけれども、万一来期もJ2となってしまったら、またこの店で牛串が食べたい。そこまであの家族には元気でいてほしいと心底願った。
そうして試合前、Seattle Standard Cafe'が生ライブで披露していた金沢のテーマソング(その名も「ツエーゲンのテーマ」)を口ずさんだ。
ツエーゲン ガンガンいこうぜ
ツエーゲン かがやくジェイのぶたいへ
オッオーオオ・オッオオッオー
オッオーオオ・オッオオッオー
今セレッソがいるJ2はレベルも経済規模もトップリーグには劣るけれど、そこでしか味わえない喜びとか、ここでしか学べない気持ちみたいなのも確かにあるんだ。その意味では、確かに輝く舞台なんだよ。
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