この試合は、前半、後半の前半、後半の後半と分ける必要があるかと。前半は霧吹きでさっと撫でる程度だった雨が、後半半ばになるとバケツを引っくり返したような豪雨になった。
鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアムは決して芝の悪いスタジアムではないが、それでもあの程度の雨が降ると泥田のようになる。
スターター
GKキム・ジンヒョン、DF右から田中裕介、藤本康太、出場停止の山下達也に代わって茂庭照幸、MF右サイド松田陸、左サイド丸橋祐介、ダブルボランチはソウザと山口蛍、2列目杉本健勇と清原翔平、FW1トップ玉田圭司。藤本と玉田は二日前の天皇杯鳥栖戦はベンチ外で、この試合に向けて調整を進めていた。
リザーブ丹野研太、椋原健太、関口訓充、酒本憲幸、山村和也、リカルド・サントス、澤上竜二。
前半、セレッソと徳島の変則守備。
セレッソはメンバー的には3-4-2-1なのだけれど、相手のプレーエリアで守備のシステムを細かく変える。
相手が最終ラインや中盤で組み立てている間は田中が右サイドに移動し、流れで丸橋が1列下がる。杉本がその穴を埋めて4-4-2とする。それ以上、相手のFWにまでボールが入ると松田まで戻って正式に5-4-1になる。
広島や浦和が行っている「攻撃時は4-1-5、守備は5-4-1」というやり方は動く人数が多い分、攻守で数的優位を作れる。だが弊害として豊富な運動量を求められる。セレッソのやり方は消極的ではあるけれど、スタミナの損耗が少ないし、個々の力を発揮しやすい。
田中はセンターバックも右サイドバックもできるユーティリティー性が持ち味だし、杉本はサイドに張り付いても試合を組み立てられる性質のプレイヤーだ。だからこそこのシステムが活きる。
弊害は丸橋の運動量。右サイドの松田は、前にいるプレイヤーが裏抜けを試みる清原、またはキープ力のある酒本だ。後ろには試合を組み立てられる田中が控える。
一方左サイドは前にいる杉本が中に入るパターンが多く、後ろも山下や茂庭で田中ほど試合を作れない。結果として、丸橋の上下動が多くなり損耗が早くなる。
徳島もこのことには気づいていて、試合開始からターゲットである佐藤晃大をこちらの左サイド、丸橋の裏、茂庭の横のスペースに入れてロングボールを放り込んできた。
ボールが収まればそこから攻撃を組み立てればいい。そして、たとえ封じられたとしても丸橋を帰陣させ、スタミナを削ることができる。
対する徳島のシステムも3-4-2-1で、セレッソと等しく、「前からいくときは4-4-2、後ろに引くなら5-4-1」というシステムで戦っている。
徳島の選手に囲まれることが多かった山口 |
この4-4-2の守備はこちらにとってやりにくいものだった。セレッソの勘所のひとつ、ボランチに入った山口やソウザのところでパスミス、判断ミスが出ると、さっとボールを奪ってカウンターに入る。前線に強力な個がいれば危険だったシーンがいくつもあった。
ソウザは佐藤について、丸橋と茂庭の守備をカバーしていたので左サイドに寄ることが多く、攻撃開始時のポジショニングがどうしても悪くなる。すると、徳島は山口一人を狙えばいいことになる。そこを狙われた。
写真を撮っていると「写真を撮っていたからわかること」もたくさんある。本来右サイドの清原が左サイドまで引っ張られたり、田中が釣り出されて中盤や前線まで出張ってしまうシーンがたくさん撮れた。それだけ徳島に振り回されたということ。
前半の写真、反対サイドにいるはずの清原が左サイドに釣り出されている |
後半、泥田のピッチと現実論。
後半は時間が経つごとに雨量が増し、ピッチの状態が悪くなっていった。ボールが不規則に滑るので、技巧に優れる選手でもミスが生まれる。その万が一のミスのために誰かがフォローに入る。すると、全体のバランスが崩れる。セレッソとすれば悪循環だった。
徳島のベースはまず佐藤に当てて後ろからフォロー、という至極シンプルなものなので特に変更はなかった。何度もソウザ、茂庭と空中戦を続けていた佐藤の疲弊は尋常ではなかったが、選手交代のカードは比較的遅め、佐藤も90分フルで使われた。
対するセレッソは前の3人がプレッシングや攻撃で酷使されるので、この位置の選手を入れ替えるために1、2枚は交代カードを使うのが最近のお決まりになっている。1枚目はいつもよくある玉田に代えて酒本という交代だったが、2枚目は清原に代えてタイプの違うリカルドになった。
この狙いは明確で、地上戦を捨てて空中戦に活路を見出しましょう、ということ。3枚目の交代は松田に代えて澤上で、これでシステム上は4-4-2、前線には180センチオーバーの杉本、リカルド、澤上が並ぶことになった。そこに酒本や丸橋、山口が長いボールを当てていく。
リカルドはスキルフルなプレイヤーではないけど、高さ勝負、ハイボール狙いといったシンプルなタスクでは十分使える。この試合でも何度もミスをしながらも、終盤決定的なヘディングも1本放っている。
ゴールをサポーターとともに喜ぶ |
この流れからのコーナーキックで競り合いがあり、ソウザが倒されてPK。これを最近エースとしてメキメキと成長を続けている杉本が決めてやっと均衡を破れた。大熊清監督にとってゴリ押しサッカーは得意中の得意だ。
2位松本も清水を破ったので勝ち点差をひっくり返すことはできなかったが、逆に清水との勝ち点差は6となった。
次節はその清水との直接対決になる。向こうは「勝利以外に道はない」という状態で臨むことになるだろうが、これを逆手に取って外連味のあるいやらしいサッカーができればと願う。愚直さが売りの大熊監督なので期待はできないかもしれないけれど……。
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