明日の19時には、ベストアメニティスタジアムで天皇杯三回戦、鳥栖対セレッソ大阪が行われる。
テレビ中継が無いので、現地観戦していない人間が試合の流れを知るには、スポーツサイトの速報かスマホアプリの速報、ないしはTwitterで発信される公式アカウントか現地観戦者のTweetとにらめっこ、ということになる。もどかしいが仕方がない。
そもそも問題なのは、セレッソはこの試合に対しどういう姿勢で臨むのか、ということだ。
平たく言うと、リーグ戦と同じくベストメンバーで戦うのか、この三日後に行われるリーグ戦、アウェイ徳島戦のために主力を温存するのか、どっちが得策なのかということ。
大前提として……。
この記事に関しては、意図的にプロスポーツのあるべき姿、理想を取っ払っている事をご理解いただきたい。
プロスポーツは興行である以上、観戦に際しチケット代が必要になる。現地までの交通費、宿泊費、飲食費などもかかってくる。サポーターや観客は、限りある人生の貴重な一部を割き、労力と財産をつぎ込み、応援ないしは観戦をする。
したがって、その試合がどんな位置づけであろうと、全ての関係者は全身全霊をもって試合に臨み、戦い、勝利を目指さねばならない。試合を興行として、観戦者の娯楽として成立させるためには、この理想から離れてはいけない。そんな大事な試合に「手を抜くか抜かないか」などという議論を持ち込むこと自体ナンセンスといえる。
けれど現実を見れば、セレッソは今シーズンの至上命題としてJ1復帰を掲げていながら、未だ予断を許さない苦しい立場にある。この最低ラインを突破するためには「やれることはすべてやる」という思考を持ち出さなくてはいけない。
札幌や松本の関係者が見れば批判非難もあるだろうが、あえて書く。セレッソよりリーグ戦上位につけるこの2チームは、天皇杯から降りてリーグ戦だけに執心できる環境を作った。わざと負けたのかどうかはわからない、だがこれは事実だ。さて、セレッソはどうするべきだろう?
天皇杯に勝つことで得られる「得」
シンプルに、まずは天皇杯にベストメンバーで臨み、勝つことの「得」から考えよう。
第一に、J2を戦うセレッソにとって、天皇杯は日本一を狙える唯一の大会だということが挙げられる。
過去三度、元旦国立までたどり着きながら、平塚(当時)、清水、磐田と辛酸を嘗めさせられ続けた。今度こそという気持ちはクラブとしても持っているはずだ。
第二に、J1の上位チームとの真剣勝負は貴重な経験になる。
今まで個の力で勝ってきたセレッソにとって、しっかりとした戦術、戦略でトップリーグを戦っている鳥栖との試合は、普段得られない経験をもたらしてくれるだろう。改善点がハッキリすればチームが良化する可能性は多分にある。この恩恵を享受するにはベストメンバーであることが望ましい。
そして、勝ち上がれば四回戦が待っている。対戦相手はまだ未定ではあるけれど、抽選次第ではACLを戦ったシード組との対戦もあり得る。これもまた経験値を積むまたとないチャンスになる。この意味でも、勝利に向けて全力を注ぐ価値はある。
天皇杯に勝つことで得られる「損」
反対に、勝った場合の「損」を考えてみよう。
第一は何と言っても過密日程だろう。仮にこの試合に勝つと、10月末から11月上旬の日程は殺人的なものになる。
- 10.30 (日) J2リーグ第38節 ホーム水戸戦
- 11.3 (木・祝) J2リーグ第39節 アウェイ千葉戦
- 11.6 (日) J2リーグ第40節 ホーム愛媛戦
- 11.9(水) 天皇杯四回戦
- 11.12 (土) J2リーグ第41節 アウェイ東京V戦
中三日、中二日、中二日、中二日、14日間で5試合を戦うことになる。それも、昇格争い真っ只中の終盤戦だ。これは明確なデメリットだろう。
第二に、ケガ人や故障者を出すリスクが挙げられる。
実際、天皇杯二回戦、京都戦では杉本健勇が負傷し、J2リーグ第31節長崎戦に出場できなかった。もちろん試合に出さなければケガはしないという理屈はない(練習だろうが日常生活だろうがケガの恐れはある)だがその可能性をわずかでも取り去る努力は行われるべきだ。
結論は出ないけれど……。
ベストメンバーか、リザーブも含めたメンバーか、どちらにしてもメリットやデメリットがある。チームにどれだけ理想主義者がいるのか、現実主義者がいるのかも大事な要素。メンバーを落とすという行為を、リーグ戦に専心するためだとプラスに考えられる人間がどれほどいるのか。
精神的要素、部外者にはわからない不確定な因子が多すぎる。だから現時点で「かくあるべき」という答えは出せずじまいだ。明日の17時にはスターティングメンバーが発表されるが、その時まで、セレッソの、大熊清監督の考えがどうなのかを静観することにしよう。
どちらを選択したとしても、俺はただ応援するだけだ。サポーターというのはとかく因果な生き物だ。
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