10/31/2005

C大阪0VS0鹿島 血塗られたカード

 これほど損闘と呼ぶにふさわしい試合も無いだろう。0-0、記録に残るのはその味気の無いスコアだけだが、その裏側には、損力を尽くして戦った両チームの血と汗がたっぷりとこびりついている。今日の試合がどれほど・晴らしいものであったか。27708人の観衆の殆どは「一見さん」だったが、タイムアップの笛が吹かれる頃にはみなその世界にはまり込んでいた。

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 負傷のゼ・カルロスはやはり間に合わず、スタメンには徳重、ベンチには苔口が入った。

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 試合開始前から異様な雰囲気を醸し出していた長居スタジアムだったが、試合自体もそれに引きづられるようにヒートアップしていった。そしてそれが90分間続いた。

 それには明確な理由があった。主審の柏原氏のジャッジの不正確さが両軍の混乱を招き、それがゲームを不安定なものにしたのだ。審判団はそれを過渡なホイッスルやカードでしかコントロールできない為、選手はメンタルをコントロールするのにたいへんな労力を割かなければいけなかった。

 セットプレーなどでも小競り合いが続き、前半では鹿島岩政がゴールポストに激しく接触、暫く殆ど動けなくなるというシーンが有った。FC東京のルーカスの件が有っただけに、相手チームながら肝を冷やした〈その後岩政は無事復帰しフル出場、西澤や古橋をガツガツと削っていた、心配した分少し手加存してほしかったのだけれど〉


 それでも優勝を狙うチーム同士の対戦だけあって、おう!と感嘆するプレーもたくさん生まれた。

 まず鹿島はセレッソの3バックの両サイドを執拗に突いた。長短のパスを上手く織り交ぜて突破を試みる。小笠原のタクトで躍る深井、増田、アレックス・ミネイロ、本山。スピードとテクニックに自信を持つ4人がゴールに迫る。そしてそれを弾き返したとしても新井場やフェルナンドが拾って分厚い二次攻撃。狭いスペースをかいくぐるプレーは、さすが鹿島。

 対するセレッソもサイドをワイドに使い、徳重のドリブル、久藤、森島、西澤の組み立て、ファビーニョの攻め上がりと持てるパターンの全てを繰り出す。守備においては1対1を作らないなど最低限の約束を徹底し、泥臭く、しかし堅実にボールを跳ね返す。目を覆いたくなるようなシュートも吉田が気迫のセーブでゴールを割らせない。

 前半の45分の濃密さは、それは凄まじいものだった。この45分間だけでも、チケット代以上の内容。


 この快感すら感じる流れを断ち切ったのは、やはりジャッジだった。後半開始早々、モリシの飛び出しに対応しきれなかった新井場が慌ててタックル、一発退場を宣告された。

 さらにさあこれからというところで西澤にも不可解なカードが与えられ、今日2枚目ということで退場させられてしまう。J通算200試合出場のプレゼントとしては、いささか悪趣味ではなかったか。


 10対10の局面で流れを掴んだのは鹿島だった。4-3-2にした上で、ボールエリアでの数的有利、空いたスペースへの飛び出しなど、運動量を前面に出して猛攻、幾度も決定機を作り出す。西澤という大黒柱を失い、次第に自陣に釘付けになるセレッソ。


 この危機を乗り切る為に小林監督がとった策は、空いたスペースを有効に使えるだけのスピードを持った選手、苔口の投入だった。

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67min


 「カサにかかって攻めていると後を突くぞ」という抑止力として、苔口はよく機能した。実際後半最も効果的な攻撃は左サイドの突・だった。前へ、スペースへ、相手よりも速くボールに追いつけ。このシンプルでありながら難しいミッションをこなしていく苔口の姿は、一時の不振から脱却したのではという期待を抱かせた〈もちろん復調した苔口は今以上の脅威になるだろう〉

 ボールを「運ぶ」役が出来た事を確認すると、次の手はフィニッシャーの投入。黒部がモリシに代わって入り。ゴールチャンスをうかがう。

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73min


 ただこれらの交代も全体の流れを完全に引き寄せるほどの影響は与えられず、全体的なイニシアチブは相変らず鹿島だった。シュートの雨が吉田を襲う。後半だけで被シュート数は実に10本、その内枠内が5。

 これを無失点で凌いだのは、吉田、ブルーノ、前田、柳本という守備陣が長い間築いてきた信頼関係であるとか、相互理解という部分が大きい。若い前田や、言葉のハンデを持つブルーノの個としての成長もさることながら、こうした繋がりが、今までのセレッソを支えてきた。


 後半も残り15分程になると、さすがに両軍の足が止まってくる。ここまで来るともう精神論の世界。勝利に対する渇望が強い方が、勝ち点3を得られる。丁度この辺りでガンバ敗れるの報が長居に届き、選手もサポーターもさらにヒートアップしてきた。最後のカードとなった宮原は、残り少ない時間で勝負を決めるプレーを期待されたと多測する。

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84min



 そして鹿島の猛攻を凌ぎきったセレッソに、最後にして最大のチャンスがやってくる。カウンターが見事にはまり、2対1の場面を作ったのだ。

 左サイドから・晴らしいボールが中央を突進していたファビーニョに届く。飛び出した曽ヶ端が足を払おうとするが、彼は別次元のボールコントロールでこれをかわした。ゴールは無人、この熱戦にピリオドを打つべく右足を振りぬく。はたしてボールは、少しずつシュートし、ゴール右側をすり抜けていった。そしてそれは同時に、掴みかけた勝ち点3が、指の間からすり抜けていった瞬間でも有った。ピッチに倒れこむセレッソの選手達の耳に、タイムアップを告げる無情なホイッスルの音が響いた。


 セレッソは首位との勝ち点差を4と縮めたものの、得失点差で4位に交代した。しかも久藤、ファビーニョ、西澤が東京V戦では出場停止となる。どの選手もチームの根幹となる選手であり、正直にいって非常に厳しい。

 西澤のところには黒部、久藤のところには徳重か酒本が入るだろうが、ファビーニョの代えはいない。下村がギリギリ間に合うかも知れないが、けっしてベストコンディションとは言えないだろう。苦しい闘いが続く、だが希望の火はまだ燃えている、この火が燃え続けている限り、チームも、私達サポーターも、全力で勝利を勝ち取らなくてはいけない。

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