前半40分 杉本 健勇(C大阪)
前半45分+1 南野 拓実(C大阪)
後半8分 柿谷 曜一朗(C大阪)
後半27分 興梠 慎三(浦和)
後半31分 柿谷 曜一朗(C大阪)
後半41分 南野 拓実 (C大阪)
前半の20分、30分くらいを見ていて、まさかこんなスコアになるとは思いもしなかった。前半45分間の浦和のポゼッションは61%、試合をコントロールできていたと思う。それを崩せたのは、レヴィーがセレッソにかけた「最後の魔法」の効果だ。
スタメンとベンチを見ると、セレッソがいかに苦しい状態だったかがわかる。シンプリシオが練習中に肉離れで戦線離脱、いつも通りの4-4-1-1のシステムながら、トップ下は毛色の違う杉本健勇が務めることになった。エジノはいつもの右サイドではなく左、逆に南野拓実が右サイド。
細かな修正を加えたこの布陣は、しかし、浦和に対してあまり機能しなかった。理由は簡単で、浦和が使う「可変システム」の攻撃時、つまり4-1-5になった時の勘所、中盤の鈴木啓太に対して杉本健勇の守備が通用しなかったからだ。
長いボールに守備陣が走らされていた前半 |
セレッソの4-4-1-1と浦和の4-1-5になった時を重ねると分かりやすい。
赤がセレッソで、黒が浦和。お互いのワントップ、柿谷曜一朗と興梠慎三に2枚のセンターバックがつく以外は全て1対1の局面になる。浦和は中盤の1、中央に残った方のボランチがスピードよく前線にボールを出せれば、相手を押し込めることができる。
逆に考えれば、ここさえ封じられれば相手を押し込めるのだけど、杉本健勇の運動量とスピードでは鈴木啓太についていけず、ほとんどのシーン、フリーな状態で前を向かせることになってしまった。
その結果守備が不安定になり、浦和の繰り出す長短のパスに走らされる場面が多発してしまった。山下達也、そしてキム・ジンヒョンが中心になって局地戦でしのいでいたものの、戦術面で後手を踏んでしまった状態を覆すまでには至らず、ミスからショートカウンターを食らい、浦和に先制を許してしまった。
この後2失点目かという大ピンチがあったものの、相手(恐らく興梠)のシュートミスに助けられ、そこから少しずつ流れが変わっていった。
この精神的な変化にあわせるように、前半の30分あたりから2列目の並びが変わった。左から南野、エジノ、杉本。
これは守備の劣勢を跳ね返す要因にはならなかったけれど、攻撃面で杉本のうまさを引き出すきっかけになった。守備のタスクが軽減され、比較的スペースがあるサイドでプレーできるようになった杉本は、右サイドで酒本憲幸がボールを入れた流れからシュート、これが相手にリフレクションして同点ゴールとなった。
立て続けに前半のアディショナルタイムにもゴール。中に入った南野が、柿谷のシュートのこぼれ球に反応し逆転。セレッソは少ないチャンスで、しかも前半のうちにリードを奪うことに成功した。
そうして、後半を迎える際、試合を決定づける采配が振るわれる。枝村匠馬を右サイドに入れ、南野を柿谷と組ませたのだ。
後半開始時 |
この交代とポジションチェンジで、柿谷、南野という強力なラインが生まれ、浦和の守備が混乱するようになった。浦和がボールを持っても鈴木啓太の位置で南野がつっかけてスピードを落とさせられるし、そこでボールを後ろに回されても前からのプレッシングをかけて奪う、ということができるようになった。
この写真は後半に撮ったものだけれど、最終ラインに入った槙野が後ろ向きにボールを持たされ、ボランチの位置にいるはずの山口螢のプレッシングにさらされている。どれだけ浦和の流れが鈍化しているか、セレッソの組織が機能しているかがよく見て取れると思う。
攻撃に変われば南野のスピードは浦和の守備を切り裂く刃になる。疾風迅雷埼玉のピッチを狼達が躍動する。
そうして、最後はブラジリアンの監督を送り出すためのカーニバルになった。躍動するのは、手塩にかけて育てた「レヴィーの息子達」。
まずは柿谷曜一朗。左サイドの角度のない位置からのシュートは決して簡単なものではなかったが、実に事も無げにシーズン20ゴール目を奪ってみせた。
後半33分 |
その後セットプレーから1点を奪われはしたが、セレッソの攻撃の核、柿谷と南野を浦和の守備が捕まえきれていないという状態は続いていたので、下手を打たなければ勝てるという確信があった。
浦和はその2人にどうしても3バックが引きづられてしまうので、後半頭に投入された枝村匠馬のオフザボールの動きも捉えられない様子だった。
右サイドからの崩しを枝村がヘディング、こぼれ球を柿谷が再び詰める。21点目。
お祭り騒ぎにベンチの表情もほころぶ。 |
最後の仕上げは再び南野。柿谷との強烈な関係性だけで浦和の守備を崩して自身今日2点目、チームは今季最多の5点目。
こういう大勝の中で、サポーターが心配しているのは楠神順平の途中投入、途中交代だと思う。
後半45分 |
現地にいた皮膚感覚なのだけれど、これは審判に対するケアの側面も多分にあった。楠神のプレーも精彩を欠いていた。しかしそれ以前に不用意なイエローを一枚もらっていて、今日の審判の偏向ぶりを見ていれば、二枚目を立て続けに出されてしまう可能性はいつもより高かった。それをパッチしたかったという意図が感じられた。
わずかばかりのしこりと、大きな歓喜と、それとは比べ物にならない、とてつもない喪失感を抱いたまま、セレッソの2013年シーズンは終わりをむかえた。
試合後には、レヴィー自らゴール前に現れ、教え子たちと言葉をかわした。
選手たちもそれに胴上げで応える。顕になったふくよかな腹部は、レヴィーの日本での冒険が心豊かなものであった証拠、ということにしておこう。
タイトルを取ると決意し、船出した2013年のセレッソは、リーグ戦4位、ナビスコカップは決勝トーナメント初戦で敗退、天皇杯も4回戦で鳥栖に敗れた。その結果は重く受け止めなければいけない。
さて、この結果は監督の采配だけの問題だろうか?選手の質が低いのだろうか?クラブの補強、バックアップ体制が整っていないのだろうか?もちろんどれか一つだけ、というわけでは無いだろう。ただ個人的にはレヴィーが最後に残したこの言葉がとても心に刺さるのだ。
J's GOALニュース
Q:タイトルを取るために必要なことは?
「2つあります。ひとつは、育成から上がってくる選手を中心に戦っていくのであれば、5、6年はそういった選手で戦い続けること。2つ目は、しっかりとした補強をできる資金を確保して交渉していくことです」
香川真司、乾貴士、清武弘嗣、柿谷曜一朗、山口螢。日本代表にタレントを送り続けたこの指揮官の言葉は決して軽んじるべきではない。2014年のセレッソにとっても、その後数年、数十年先のセレッソにとっても重たい言葉だ。そう皆が受け止めてくれたならば、歓喜の瞬間は決して遠くないと信じる。
さて、明日はファン感謝祭だ。こういう小難しい話はしばらく口にしないようにしよう。
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