10/20/2013

2013 J1 第29節 C大阪 2vs1 湘南 曜一朗吠える。 #cerezo #photo

得点者

前半28分 ステボ(湘南)
前半41分 杉本 健勇(C大阪)
後半11分 柿谷 曜一朗(C大阪)


苦しかったんだろうな。逆転ゴールを決めた柿谷曜一朗は、他のどのゴールの時よりも激しく叫んだ。それは代表で何もかもうまくいかないで苦しんでいた男が、もう一度自分が何者であるかを見つけることができた、その瞬間の産声のようにも見えた。


スタメンとベンチ。スタメンには柿谷、山口螢の代表組、そして世代別代表に招集されていた南野拓実が戻りベストメンバー。ベンチでは茂庭照幸が外れ、小暮大器が代わって入った。


試合の入り方は、堅調なセレッソとチャレンジする湘南という形だった。セレッソはスキルや組織力に優れていたが、負ければタイトルが遠のくという意識が、一歩目の足を重たくさせていた。不意に飛び込まず、確率の高いプレーを慎重に選んでいるように見えた。さし当たってミスもなかったけれど、予想外、規格外の嬉しさも無い。


対する湘南は、個々の力量差を運動量であったり、しっかりとした分業によって補おうとしていた。システムは3-4-3とされていたが、守備の際は5-4-1になって、5バック、その前に4枚のラインが入る堅い守備を敷き、攻撃の一歩目は徹底して長身FWのステボに当ててきた。


ステボはスピードやスキルはそれほどといった印象だったけれど、空中戦と馬力はケネディに匹敵するものがあった。山下達也が当たっても勝率は五分五分。落とされるとかつてセレッソでプレーした大竹洋平が動きまわり、捕まえるのが難儀だった。それだけの、ワンパターンな攻撃ではあるけれど、その分攻守の動きがはっきりしていて、湘南の組織力を高めていた。


なので、散々攻めあぐねた挙句に左サイドをえぐられ、そのステボに決められた時はイヤな予感しかしなかった。湘南が狙っている通りの流れを作られて、そこを跳ね返せる力があるのか不安で仕方がなかった。

その黒い感覚をかき消してくれたのは、杉本健勇だった。


堅く密集した湘南の9枚の守備陣の裏を丸橋祐介が突き、扇原貴宏がつなげ、杉本がうまく流し込んでくれた。湘南GKアレックス・サンターナはこれまでに丸橋のフリーキックや南野拓実のミドルをファインセーブしていたから、できは悪くなかった。そういうキーパー相手に最初のチャンス、1対1で冷静に決めきった杉本は賞賛されるべき働きをした。前半終了間際という時間帯も最高だった。


前半はセンターフォワードとして起点となり、攻撃の一手目を担い、後半途中からは右サイドハーフとしてボールの収めどころになった。そんな小器用なマネは杉本にしかできない。セレッソの20番としては異質かもしれないが、いい調子をキープし続けている。


そうして、後半。流れとしては6対4くらいでセレッソが握っていた。湘南は多分1-0の試合が理想だったはずだけれど、同点にされたことでまた我慢のサッカーを続けざるを得なくなった。それは精神的に厳しいものだったと思う。セレッソもカウンターの怖さを知っているから冒険はできなかったが、失点の不安は前半よりも少なくなっていた。


この流れの中で、何気なく得たコーナーキックから、柿谷の勝ち越し点が生まれる。流れとしては去年のホーム鳥栖戦のゴールに近い。ニアで競り合ったボールが、ファーに流れていた柿谷の読み通りに転がり、そこを押し込んだ。 柿谷は確か二度ジャンプをして、クルクルと二度回り、歓喜の声を上げた。ヨーロッパで味わった辛さから解き放たれた瞬間だった。


こうなると、湘南はチームとしての体を失っていく他なかった。ステボは競り合いの連続で疲弊していたから、同じく長身のウェリントンを入れてパッチしたが、前半のステボ程の迫力は無く、湘南のチャンスは2度あっただけだった。その内の一度はキム・ジンヒョンがスローをミスして相手ボールになったものだ。


このリードをより盤石なものにするべく、レヴィー・クルピは二つの策をとった。一つは堅実なプレーをする枝村匠馬を入れたこと、もう一つはシステムを4-4-2から4-2-3-1、いや、4-4-1-1に変更したことだ。


後半22分



スピードと堅さのある山口螢がボランチに入り、シンプリシオも中央に残ることで、セレッソの4バックの前には堅牢な3枚が並ぶ形になった。5試合連続で引き分けた時のシステムだが、この形でまず守備からと意識付けられればそう崩されることはない。少なくとも中央をこじ開けられる危険が減ったことで、後ろの守備は随分やりやすくなったはずだ。


その後は、枝村がらしい飛び出しで裏を突くシーンが両軍唯一の決定機になっただけで、静かに試合が終わっていった。過去何度も逃げ切りを失敗していたセレッソからは信じられないくらい、堅調で確実な試合運びだった。

横浜Fマリノスが勝利したので首位との勝ち点差は6のままだが、得失点差は1しか違わないので、勝ち点で並んだ時に得失点差で上に立つ算段がついた。そして目下の目標とすべきACL圏内、3位広島とは勝ち点差3に縮まり、こちらも得失点差を考えると並んだ時に上に立てる。

追われる側と追う側、どちらが気が楽かを断じるのは難しいけれど、セレッソとしては勝つしか無いという意識を持ち続けられる後者であることがプラスに働いているように見える。とにかく勝ち点3を積んでいくしか道はないのだ。何処であれ誰であれ、ゴールを奪い、勝利あるのみ。

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