扇原は左右にボールを散らすために盛んに体の向きが変わる。バックスタンドだと前から撮れるのか背中向きになるのかで趣が変わるので、それは難しい。
山口螢はそれに輪をかけて難しい。扇原は攻撃の時、センターバックの間か下がった丸橋の裏と「定位置」があるのだが、山口螢にはそれがなく、常に移動し続け、勘所を締めているからだ。また、ボールを受ける姿勢、奪う姿勢も多岐で、都度都度で違うテクニックで撮らなくてはいけない。
そうして、一番厄介なのが柿谷曜一朗と枝村匠馬だ。カウンターにしても崩しにしても、仕事が早く、一瞬であるからだ。あっ!とおもった時にはシュートを放っているので、決定機をカメラに収めようとすると、それこそずっと貼り付くくらいの覚悟がいる。
昨日の代表戦は選手を撮りやすい試合だった。パスをもらって一度、コントロールに一度、体をなおして味方にパス出しをするか、ドリブルをするのでもう一拍。どの選手もモタモタとボールをこねていて、前へのスピードが足りない。あれではいい速攻が生まれるはずはない。柿谷がどれだけモニターの外でラインの裏を撮り続けていようと。
解説の城彰二は、柿谷の動き出しが早いと苦言を呈した。けれど、代表同士、とくに堅守速攻を得意とするヨーロッパの中堅クラスと対峙して、のんびりボール回しをしている方が悪ではないか?
思い出してほしい、柿谷が代表で奪った3つのゴールは、どれも縦への速さの際立った中で生まれている。韓国戦の1点目、青山敏弘から出たとんでもないロングパスは、柿谷の動き出しを見ていたからこそできた。そういうひらめきや輝きが、今の代表にあるのか?
柿谷は、今の代表の中では死んでしまっている、残念ながら。このまま代表のやり方に押し込められていては、輝きを放つことは容易では無いだろう。まだ豊田陽平や大迫勇也のようなフィジカルで相手と競ったり、ボールをおさめる動きが旨いセンターフォワードの方が馴染むかもしれない。
ならば、今の代表に居続ける意味は無い。一度客観視ができるところに立ち戻るのも方法だ。徳島が転機になったように、回り道をして見つめなおすのもいい機会かもしれない。
しかし、代表はなぜ不協和音ばかりが目立つ4-2-3-1や3-4-3に固執するのだろう。本田圭佑を活かすなら、香川真司を活かすなら、ほころびが目立つボランチのバックアッパーを試すなら、試行錯誤の選択肢はもっと多くていいはずだ。本田を1トップに上げて香川とタテの関係を作ったり、サイドを攻める清武弘嗣や乾貴士をもっと使い込んでみたり、思いつくことはたくさんあるのに。
これが日韓大会や南アフリカ大会の前にあったような「伸び悩みの時期」であればいいのだろうけど。日韓大会の前も結果が出ず、5バックを試したり、とにかく迷走した。南アフリカ大会の前も岡田武史監督に対する不信は相当だった。この2大会とも、原点であるフラット3の見直しや、ぶっつけ本番の4-3-3といった光明があった。今回はどうなるのだろう?まだ夜空の真ん中で、日の出を遠く感じる。
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