10/14/2013

第93回天皇杯 3回戦 C大阪 4vs0 神戸 残酷な時間。 #cerezo #photo

得点者

前半15分 シンプリシオ(C大阪)
前半31分 枝村 匠馬(C大阪)
後半5分 杉本 健勇(C大阪)
後半11分 枝村 匠馬 (C大阪)


時間というものは残酷だ。1年前にホームズスタジアム神戸(今のノエビアスタジアム)で戦った時、神戸との戦力差は紙一重だった覚えがある。それが、ディビジョンが違うだけで、わずかの間で、これほどの差に変わるのかと愕然とした。


セレッソも万全の状態ではなかった。柿谷曜一朗、山口螢を代表で欠き、南野拓実も年代別代表に招集され、黒木聖仁はケガ。ベンチ入りメンバーは神戸よりも1人少ない有り様だった。


前半立ち上がりの10分程は、神戸がやや押し気味だった。前線からガツガツと当たりに行って、セレッソのボランチ、センターバックに圧をかけ、パス精度を落として奪う「いつもの神戸」。ただ、幸か不幸かこの位置にはシンプリシオと扇原貴宏という正確なパスを出せる選手が立っていて、奪われず、精度の高い展開ができていた。まずそこで神戸の出鼻をくじくことが出来た。


そうしていい位置でボールを奪えば速攻になるのだけど、ここではセレッソの右サイド、神戸の左サイドがバランスのいい状態(神戸からはまずい状態)で、楽に裏をとることができた。


エジノが右サイドに流れ、杉本健勇はゴール前、楠神順平と枝村匠馬は中に絞り、そのスペースに酒本憲幸と丸橋祐介が上がっていく。後ろではシンプリシオがセンターに入り、扇原はセンターバックの間か丸橋の後ろからボールを入れていく。どちらかというと3-1-4-2に近い形になっていた。


エジノは突破する時は右サイドに流れるけれど、スピードが落とされてしまったり、ゴール前でシュートを撃ちたい、ゴールに絡むプレーがしたいと感じた時はセンターに切れ込んでいく。この時に相手の左サイドバックなりサイドハーフなりを一人引っ張っていくので、酒本にはいい空間が与えられた。左サイドの丸橋も、楠神が同じタイプの中に入るプレーをするので、リズムよく攻撃に絡めていた。


前述の通り、神戸は(J2の試合をそれ程見ているわけではないので断言はできないけれど)堅守速攻のスタイルをそのままに残していたように見えた。けれどもその精度はかなり落ちていて、セレッソのほうがしたいサッカーを完遂できていた。

そうでなければ、前半の15分という早い段階で、あれほど正確なショートパスをゴール前で繋がれて、決してスピードがあるわけではないシンプリシオの正面突破を許すなどということはなかったはずだ。


そうして一度リードを許すと、神戸のサッカーはかなり苦しくなる。それは分かるのだけれど、それでも何気ないファールからのシンプリシオのクイックリスタート、反応した枝村のゴールという2点目はお粗末な失点だった。


セレッソからすれば、相手のミスを逃さなかったということになるけれど、どちらかというと神戸の脆さが際立った。


一方の守備では、これはもう山下達也、藤本康太の二人をほめないわけにはいかない。



神戸の攻撃では小川慶治朗、ポポといったスピードと馬力のあるコマがあって、ボランチの位置でフィルタリングがかけづらいのではという危惧があった。それを二人を中心とした4-4-2のラインで封殺することができた。後半頭からは田代有三、途中からは都倉賢という高さと激しさのあるセンターフォワードが2枚入ったけれども、安定感は変わらずで、1度あったキム・ジンヒョンとの一対一以外は完璧だった。


天皇杯では2試合で3得点と結果を残している杉本も、悪くない動きができていた。エジノが右に、杉本は左に動きたがるクセがあるのでかぶりにくく、楠神、枝村は中に入るプレーを選択していたので、こちらとも共存できていた。

もともと、杉本は得点もさることながら、その一歩前、二歩前のプレーで光るものがあるので、ゴールがでた自信がそちらのほうにもいい影響を及ぼしてくれればと思う。

セレッソの交代は全て選手の疲労のコントロールであったり、時間稼ぎや試運転の要素が強かった。

後半23分

後半43分

茂庭照幸は久々の実戦だったが、対人の強さやカバーリングのうまさなど変わりなく、頼もしい存在が帰ってきたことを印象づけた。


セレッソとしては言うことのない90分間で、危なげなく四回戦にコマを進めることができた。


一方で、神戸にすればかなりダメージの大きな敗戦だったのではないだろうか。J1とはいえキーになる代表クラスの選手が3人も抜けたセレッソに、4-0というスコアは看過できないものだったのだろう。神戸のサポーターの一部にはゴール裏に居残ったグループもいたようだ。

セレッソも4シーズンぶりにJ1昇格を果たした2010シーズン、開幕のアウェイ大宮戦で惨敗を喫し、J1の厳しさを痛感したことがある。香川真司、乾貴士、清武弘嗣、家長昭博、マルチネス、アドリアーノ、上本大海、高橋大輔など、今思えば贅沢がすぎるほどのメンバーを揃えてもそれだったのだ。

結局、3バックを4バックにして、中盤にアンカーを入れた4-3-3、そこから派生した4-2-3-1とシステム変更したことで、あの時のセレッソもようやく流れをつかんでいった。逆に言えば、J1規格に慣れ、そこまでシステムを動かさないと順応することもできなかった。


改めて、チームをJ1に残し続けることの大切さを痛感する。


セレッソはこの試合で活躍したシンプリシオを切り、レヴィー・クルピとファミリーであるコーチ陣を総入れ替えする予定だという。

確かに変化は必要だとは思う。ただし、それはよいものであるべきで、出費を惜しむあまりに大切なものまで削ってしまうようなものであってはいけない。フィロソフィーといえば分からないでもないけれど、真意がどんなものなのか、試合後にふと不安を感じてしまった。

ここまで来たセレッソが瓦解する変化ではないように。

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