阪神タイガース19年ぶりの優勝。その瞬間から、そこは無法地帯と化した。ジェット風船が飛び交うのを合図に、あちらこちらで六甲颪の大合唱。血気盛んな若者が道頓堀に飛び込むと、皆がそれに続く。
向かいの御堂筋側ではダイブの様子を映そうと大勢の野次馬が携帯を取り出し、その一団は御堂筋の7車線中3車線を埋め尽くすまでになった。ダイブが起きるたびに「おおーっ!」という歓声が上がり、さながらPLの花火大会。機動隊の装甲車が2台有ったが、ほぼ無力といっていい状態。ひっかけ橋も警官達が人の鎖で立入り禁止にしようとしていたようだが、数十人対数千人、あっという間に飲み込まれていった。
ひっかけ橋に進むと、近隣の飲食店は全て入り口を物理的に封鎖し、カーネルサンダースや食い倒れ人形はしっかりと固定されていた。しかし19年間溜まりに溜まったエネルギーを発散しようと、今度は飲食店の屋根に登る者が出てきた。
「危険ですから降りなさい!」
橋のたもとに有る交番から警官が必死に叫んでいるが、効き目なし。その交番の屋根にも人が群がっていた。四方八方にいる阪神ファンが歌うヒッティングマーチはさながら360度全方位ドルビーサラウンド。頭痛が私を襲う。
「ここは本当に日本か?」
冗談交じりに独り言をつぶやいていると、
「アカホシー、アッカホシー!!」
と叫びながら群衆に加わる東南アジア系の男性を見つけた。世界中に阪神ファンがいるのか!?
彼が加わった一団の真ん中にはお立ち台(後に立て看板だと判明)が有り、そこに登った者は一芸を披露しなければいけないという暗黙のルールが生まれていた。中には下がアスファルトだというのに群集めがけてダイブする者までいた。調子に乗って服を脱ぎだし、パンツ一丁で踊っている若者がいたので適当に「あと一枚!あと一枚!」とアジテートすると、群集からあと一枚コールの大合唱が起こり、結局彼は生まれたままのかっこうで群集に飛び込んでいった。
誰彼構わず胴上げする者、警官を踏み越えてひっかけ橋に駆け込み、さながらレミングのように投身していく者、カニ道楽の看板であるカニの目玉を引っこ抜く者(盗んで何の価値があるのだ!)
こういうのがそこかしこにいる!!
とにかくあの日あの時の大阪は日本という平和な法治国家の枠を軽く飛び越えていた。
今日ひょっとしたら、あの日のような事が起きるかもしれない。ひっかけ橋に仮設された3メートルの壁は容易く破壊されるだろう(ベルリンの壁だって一晩で破壊されるのだから、あんなぺらぺらの板を張ったところで効果が有るわけが無い)。夜、大阪の繁華街に行く用事の有る方はくれぐれも用心して頂きたい。
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