てきざい-てきしょ 【適材適所】<
人の能力・特性などを正しく評価して、ふさわしい地位・仕事につけること。
今日の試合を観ていてはっきり感じたのだけれど、塚田という人は、こと人材の育成に関しては、セレッソと繋がりのある人間の中でも抜きん出たものが有る。序盤使えなかった河村、ルーキーの宮本、そしてピンゴでさえ、ある程度目処の立つ選手にしてしまった(勿論今の出来に満足しているわけではないけれど)。
でも、監督という職業は育成だけが仕事ではない。育てた選手を配し、戦略を練り、戦術を立て、チームを勝利に導かなくてはいけない。
台所事情が苦しい、それは判る。ならばなお更、今ある選手の持ち味を余す事無く引き出さなくてはいけない。その才覚が、塚田監督には欠けている。結果として、塚田監督より下の部分では、監督自身も含め皆が適材適所とは言い難い位置にいる。今日は引き分けに持ち込めたが、ここから先これで勝ち点を積み上げられるのか、疑問に感じる。
スタメンを見よう。
名波がようやく先発したものの、ポジションは本来のトップ下や上がり目のボランチではなく、運動量が求められるシャドーの位置だった。右サイドの酒本、スイーパーの江添は変わらず。元日本代表にして名門クラブの元キャプテン、今期キャプテンを務めている去年のベストイレブン、今年までリーガでプレーしていたストライカーが揃ってベンチに入るという、最下位とは思えない贅沢な用兵。
名波ほどの者なら、プライドを捨てきれずに自らのプレースタイルを変えない、などという「反逆」が有っても不思議ではない。けれど、彼は嫌がる事無く汗かき役に徹していた。途中レイトタックルまでして警告を受けている。
他のメンバーもそれなりに奮起していた様子だったが、自力の違いとミスキャストの穴は埋め切れなかった。
後半途中までの最終列とボランチはとりわけ酷かった。クリアボールをことごとく相手に拾われる、サイドのスペースをロングボールで突かれる、やっとボールを奪っても、なかなか前に運べない。何かに憑かれたかのように、いい展開が生まれない。前半勝負という指示か飛んでいたのか、とにかく運動量だけは有ったけれど、空回りするばかりだった。だから前半のミスから生まれたカウンターでの失点は本当に痛かった。頑張っても点が奪えず、逆に失点したというショックはいかばかりか。
後半立ち上がりも守備が修正仕切れず、江添のクリアを拾われて二失点目、思わずひざに手をあてる西澤。
だがここで吹っ切れたのか、ようやくパスが繋がり始める。名波、ピンゴからゼ・カルロスへ、はたまた酒本へ。クロスの質が悪くフィニッシュまで繋がらないものの、サイドを生かす大きな展開が生まれ、押し込む時間帯も増えてきた。
この流れを断ち切ったのは、紛れも無い塚田監督だった。古橋と大久保を準備させ、交代させるのは、ここまで大車輪の活躍を見せていた名波と森島寛。
少々努力を要するけれども、意図は判らないでもない。二人ともここまで過酷と思えるほどの運動量でピッチを駆けていたし(本当はもっと河村、ピンゴが動かなくてはいけないのだけれど)、いい流れが生まれてきたところで、よりゴールに貪欲なプレーヤーにスイッチするのは、決して奇妙な采配ではない。
しかしその流れを生み出していたのは、明らかに交代で下がる名波、森島寛だったわけで、この二人が欠ける事のダメージと、古橋、大久保が加わるプラスの収支が、どうにも釣り合わないように感じた。第四審が掲げたボードが8と16に輝いていたのが、私には信じられなかった。
この交代準備を、名波は見ていたと思う。でなければ、あんなミドルを打たないし、打てない。とんでもないゴールだった。もし私が監督なら、慌てて大久保か古橋を引っ込めていただろうが、そんなアドリブなどプランに練りこまれるはずも無く、移籍後初ゴールを喜ぶ時間さえ与えられないまま、二人のベテランは「予定通り」ピッチを去った。
交代で入った二人は、可も無く不可も無しの出来だったが、1点差に迫った勢いは残ったままだった。相変わらずボランチから前にボールが出辛いままだったが、このボトルネックを抜けると迫力の有る攻撃が出来るようになった。惜しいシーンが何度も
ここで攻守の繋ぎになったのは、意外な事にピンゴだった。後ろでボールを回していると見るやそのボールを受けに行き、攻撃に厚みが無いと見るやゼ・カルロスらとアクセントをつけに走る。肝心な時に消えてしまう「相変わらず」のシーンも有ったが、あの時間帯に限ればキチンと機能していたと思う。
セレッソの勢いと長居の呪いが重なって、この試合も終盤鹿島の足が止まる。ボールばかりが行ったり着たりの泥仕合に。
塚田監督の迷采配がこの様相に拍車をかける。なんと1点ビハインド、残り1分になってからの選手交代。負けている状況で時間稼ぎになりかねない指示、私の人生の中で始めての体験だった。
ここで命運尽きたかと思ったが、長居の神様は実にいたずら好きのようだ、そうでなければ余程鹿島がお嫌いと見える。酒本のシュートはジャストミートしたものではなかったが、何本もあった足の林を抜け、曽ヶ端のリズムを微妙に狂わせ、あっけない程簡単に、ゴールネットに触れた。
勝ち点を1拾った。この試合に限ってはそれでいいと思う。でも残り9試合、これ程の幸運が続くとは思えない。やはり、適材適所を今一度吟味して頂けないだろうか。
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