たらふくうまいものを食べ、ただひたすらに心地いい風を感じた。今回の遠征はどこか懐かしい、心の琴線に触れるようなものになった。貧乏旅行だったが、だからこそ楽しいと感じられた。もちろん、試合に勝てたのが大きいのだけど。
大阪から小倉、博多方面へは日本旅行から「バリ得こだま」という新幹線の格安チケットを利用した。新大阪から小倉までこだまで4時間半ではあるが、7100円と夜行バス並みの料金なので文句は言わない。新幹線なので座席も広く、快適だ。
山口岩国辺りから、車窓にはコンビナートが堂々と立ち並ぶようになってくる。中学生の時に習った「北九州工業地帯」とご対面だ。その鉄の森の真ん中に小倉がある。駅舎ではギラヴァンツのユニホームを着た駅員が、九州内外から着たお客を訛りのある声で案内していた。ああ、アウェイに来たのだ!そこからシャトルバスの出る折尾駅まで移動する。バスとの接続もスムーズだった。サポーター仲間と合流してスタジアムへ(貴之くん今後ともよろしく)
開門までの時間はスタンドの陰に隠れて腹ごしらえ。折尾駅のご当地駅弁、かしわめしにした。鶏肉を炊いたスープで米を炊き、上にのり、錦糸卵、鶏肉のほぐし身が敷き詰めてある。食べるとしっかりした滋味があり、またその飾らなさが北九州の風土とマッチしているように感じた。ついハマってしまい、夕食もコレにしてしまったほど。もう少し飲めるのなら地元の焼酎と合わせたいところだ(九州のコンビニは焼酎のラインナップが充実している)
本城陸上競技場の周りは住宅街になっている。戦後に街中を、実際のロバに引かせて売り歩いていたという「ロバのパン屋」が通る牧歌的な場所。ロードサイドの飲食店とショッピングモールの合間合間に、年代物の鉄筋コンクリートのマンションが林立しているところがあり、かつての栄光と、その緩やかな衰退を刹那に感じさせた。写真は試合後、歩いて立ち戻った本城駅の近くで撮影している。
試合後夕刻、トンボ帰りで小倉に戻り、そこからサポーター仲間とその郷里、大分に向かった。とにかく遠くに、見知らぬ土地に行ってみたいという、ただそれだけの理由で。お目当ての唐揚げぐらい食えればそれで満足だった。九州は電車もなかなかに魅力的だが、バス網も発達していて使いやすい。
日本最古の立体交差駅である折尾、工業地帯の郷愁ただよう本城と違い、バスの終着点である大分駅と、その駅ビルは美しい近代的な建物だった。最近リニューアルされた、衣食住のおよそが一カ所でまかなえる一大商業施設。この日も遅くだというのに多くの人たちが行き交っていた。
その日の宿はそこから3駅ほど離れた場末のホテルにした。もちろん、安いからと言うのが理由だ。
この駅がまたいい塩梅に昭和の空気を残していて、今年40になろうとする中年の心をくすぐった。駅前には「そば、うどん、焼肉」などというデタラメな看板のメシ屋まである。なんて楽しいんだろう。ホテルも程よくしなびており、子供の頃に戻ったような不思議な感覚を味わえた。大分には昭和の空気が多分に残っている。これは、最新のズームレンズを使うべきではないと、50mmの単焦点レンズに付け替える。駅舎や風景を一枚一枚大切に撮っていった。
仕上げの唐揚げは、翌日立ち戻った大分駅で朝食代わりに食べた。どこがうまいかサポーター仲間に聞くと、フードコートのそれが一番だと言う。だまされたと思ってLサイズとハイボールを頼んだが、これが実にうまかった。胸肉を使っているので脂っこくなく、衣が薄いのが特徴だ。サクサクという衣の食感ではなく、ぷりっ、ふわっという肉の弾力を楽しむ作りになっている。衣の薄さと肉の食感が絶妙で「地元の人はキロ単位で買う」というのもうなずけるものだった。
うまいうまいと唐揚げを食べていると、サポーター仲間が「ただの唐揚げなのに」と笑った。その土地に生まれ、その土地で育った人は、地元の悪いところに気づくことはあっても、いいところにはなかなか気づかないものなのだな。この唐揚げは小倉や博多からバスで行くだけの魅力がある。
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