11/04/2005

C大阪1(4PK1)1HondaFC 残された課題。

 V東京戦にはファビーニョも西澤も久藤も出場出来ない。それを踏まえた上で、この試合が有ったものと思う。いつもは控えに回る選手達にとっては格好のアピールの場だったはずだが、彼等には空回りする気持ちすらなく、期待を裏切る結果になった。

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 トップは黒部。ゼ・カルロス、徳重の負傷(徳重は今日負傷したらしい)で左サイドのスタメンは苔口になった。

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 さて、この黒部と苔口が試合開始から全く機能しない。黒部には3番石井がきっちりとついていてハイボール、ロングボールは殆ど跳ね返されてしまう。苔口は4バックでスペースを消されていたせいも有るが、足元にボールを欲しがるシーンが多々有った。特に苔口はらしさが無く、焦燥感を感じていた方も多いのではないだろうか。

 常々基点になっている左サイドと1トップでキープが出来ないので、セレッソはリズムが作れない。古橋、ファビーニョ、久藤らが何とか体面を保とうとするのだが本調子とは程遠い。

 そんな中、前半15分に古橋がセットプレーから先制点をあげる。古巣への恩返しとも言える一撃で相手を吊り出す事が出来るかと思われたが、ここから話がややこしくなってきた。


 ホンダの基本は4バックのラインディフェンス。奪ってからは手数をかけずロングボールでウイングを走らせるという典型的なカウンターサッカーなのだが、これが上手く機能していた。セレッソは3バックの両サイドで1対1の場面を作られ、よくピンチを招いていた。

 リードを奪われた事でプランを変更するかに思われたホンダだったが、失点後もこの戦術を変更しなかった。きっちりと崩されての失点ではなかった事が原因だったかも知れないが、とにかく徹底してサイドからの攻めを続けた。それが僅か5分後の同点弾につながった。


 そこからもホンダが主導権を握る時間が続いた。全員が全力で走り回り、個の力の差を人数でカバーする。特に古橋には厳しいマークがついていた(彼をフリーにする事がどれほど危険なのかを一番よく知っていたからだろう)。厳しいマークの代償として後半一人が退場したのだが、それでも戦術は変わらなかった。FWの足が止まっても焦る事無く184㎝の長身FW川島を投入、新たなポイントを作る。


 セレッソも手をこまねいていたわけではなかったが、選手交代によって劇的な変化が生まれる事は無く、苦戦する。

 まず後半途中、機能していなかった苔口に代えて酒本。

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 酒本は直接得点に絡むことは無かったが、この試合他のセレッソのプレーヤーには見られなかった気持ちを前面に出したプレーで局面を打開しようとしていた。もし周りに呼吸の合うプレーヤーがいたなら、より評価されていただろうと思う。

 立て続けに森島→宮原。

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 宮原のプレーは御世辞にもいいものではなかった(パスミスの多さは焦りからだろうか)、だが自分がボールを奪われればすぐにリカバリーに走ったり、パス&ゴーを繰り返したりと、以前よりも積極的に動いていた。こういう手抜きをしないプレーには好感を持つ。


 この二人が入っても尚、流れが変わらなかったのは、チームの根幹の部分に問題が有ったからだと感じる。勝って当然、大量得点が当たり前という空気がチームやサポーターに蔓延していた事は否定できない。

 対するホンダFCは実に高いモチベーションで試合に臨んでいた。恐らくこの日の為に様々な練習を積んでいただろう。古橋がJのピッチで活躍している姿を見て「俺だってやれる」と思っている選手も一人や二人ではないはずだ。

 心の有り様がこれだけ違えば、例えカテゴリーが一つや二つ違ってもこの展開になるのは当然かもしれない。「動員」をかけられたホンダ社員も、前半までは芝生に座ってバルーンスティックを叩くだけだったが、懸命のプレーに心打たれたか、延長に入る頃には全員が立ち上がり、最前列で声援を送っていた。

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 後半を終えても1-1、続々と入るJ1勢勝利の報に、サポーターもプレイヤーもようやく目が覚めた感の有る延長戦。しかし焦りや躊躇といったネガティブな感覚がセレッソから「らしさ」を奪い去っていった。延長突入時に足を痛めていたファビーニョを鶴見と交代させたのも、全体の不安定感を増長させていた。


 最後まで決めきれずにPK戦。事ここに至って、勝負の行方は判らないものになっていった。「ひょっとして」という期待と不安が長居第二スタジアムを包む。

 しかしホンダは3人蹴って2選手が失敗、冷静に4人連続で決めたセレッソが、実にあっさりと勝利収めた。ひょっとしたら、ホンダの選手達に勝てるかもしれないという欲が生まれ、それがキックの精度を落としたのかもしれない。試合をここまでこじらさせたのも気持ちの有り様だとするなら、試合の幕引きもまた気持ちの有り様というわけか。

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 この試合でセレッソに何か得るものが有ったかと聞かれれば、「慢心の危険性」以外の答えは見当たらない。セレッソの持ち味である泥臭さ、労を惜しまぬ姿勢が崩れた時の脆さを、チーム全員で身をもって知った。それを糧に出来ないようであれば、リーグ戦も天皇杯も苦戦が続くだろう。

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