11/24/2005

C大阪1VS1大分 安い授業料。

 勝てた試合だったか、負けた試合だったか。セレッソのサポーターであっても、恐らく殆どの人が「引き分けで良かった」と感じているはずだ。それほど今の大分は強かった。しかしそんな中でも、しっかりと勝ち点を上積みできるセレッソもまたいいチームと言えるのではないだろうか。

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 スタメンは予想通り。ファビーニョ、久藤が復帰。藤本を除いて今期のベストメンバー。

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 試合は序盤から動く。大分の狙いは3バックの両サイド、特に左サイドのスペースと、3バックと吉田の間のスペース。チームの結束力が売りのセレッソでも、結びつきが弱い部分は当然ある。そこを徹底して突いてきた。

 奪ったボールは必ずゼ・カルロスの裏か、前に出ている3バックと吉田の間のアーリークロスへと繋がっていく。下村がなんとかスペースを消そうとすると、今度は下村とファビーニョの間に攻撃の流れが入り込んでくる。怪我明けのゼ・カルロスの状態を見ての作戦だったのだろうが、とにかくこの形で崩され続けた。オープニングシュートも含めて前半2本のシュートがバーに当たったのは幸運というしかない。


 大勢は大分にあった前半20分に、二つ目の幸運。徹底マークにあっていた西澤が左からのクロスを後ろに流し、そこにファビーニョが駆け込んでゴール。最初の決定機を見事ものにし、リードを奪う事に成功した。

 しかし、このリードも熱戦の幕開けを告げる鐘の音に過ぎなかった。セレッソの全員守備、全員攻撃を果敢なプレッシングで跳ね除け、攻撃に転じれば徹底的に相手の弱い部分を突く。大分は全員が同じビジョンを持ってプレーを続けた。藤本のクリアが不正確だと判ると左サイドからのクロスは殆どがファーサイドへ蹴りこまれる。仮に藤本のところで防いだとしてもセカンドボールを拾って波状攻撃。防いでも防いでもキリが無い。

 普通のチームであれば失点すれば多少の動揺が有る筈なのだが、大分にはそれが無かった。「シャムスカの指示通りにプレーすれば勝てる」という揺ぎ無い自信が有るのだろう。事実セレッソは単発的にいいシーンは作れても、ゲーム自体を支配する時間はほんの僅かだった。前半を1-0で折り返しても、楽観出来る要素は一つも無かった。


 後半に入ると、やはり危惧されたスタミナ切れが起こり、チーム全体の運動量が落ち始めた。対する大分は攻め疲れなど微塵も感じさせず。ボールを支配した。攻める大分、守るセレッソ、張り詰めた空気がスタジアムを包む。

 この構図を変えようと動いたのは小林監督。精彩を欠いていた久藤に変えて今一番登り調子の酒本を投入する。

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 するとまるでそれを待っていたかのようにシャムスカ監督も動く。DFの上本に代えて攻撃的な西山を投入し、4-4-2のフラットな3ラインにフォーメーションを変更、徹底的にゼ・カルロス、酒本の裏を突く作戦に出た。攻撃のテコ入れを図ったセレッソだったが、より押し込まれる機会が増える結果となった。酒本は果敢に攻め込むものの、まわりとの連携が悪く、分断される。

 次の交代は森島から宮原。

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 パッサーとして期待された筈なのだが、気持ちが焦って上手くボールが繋がらない。宮原個人としても不満の残る活躍ではあったが、この時点でチームの意思統一にもかなりのブレが出始めていた。カウンターの時にはどうするのか、守備は何枚有れば大丈夫なのか、どこを攻めていけばいいのか、そういったイメージが共有できない為になかなか相手陣内に進入できない。後半最大のチャンスだった西澤の至近距離からの連続シュートもキーパー西川に阻まれた。


 悪い流れを断ち切れないまま、後半35分。ついに3試合無失点を続けていた守備陣が破綻する。クロスからの混戦を押し込まれ、前に出た吉田の頭上をループ気味のヘッドが跳び越していく。精一杯伸ばした手の僅か先を、ボールがゆっくりと通過していった。同点。


 こうなってはもう攻めるしかない、怪我から調子を落としているゼ・カルロスを下げて黒部。古橋を左に回し、宮原をトップ下に。

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 黒部の持ち味は1対1の駆け引きの上手さに有ると思っているのだが、今日の試合でも上手くDF越しにシュートを放っていた。もしそれが入っていたなら、もう少し違う展開になっていたかも知れないのだが、決めきれないところに黒部の不調ぶりを感じてしまう。


 また攻めにウェイトを置いた事でカウンターを浴びるのは覚悟していたが、大分のカウンターの精度の高さは凄まじいモノだった。誰かがボールを奪うとDFラインの間に少なくとも3人くらいが飛び込んでくる。ブルーノ、ファビーニョ、下村という固いブロックで辛うじてせき止めていたが、それもかき出すのがやっとと言った風で、攻めの起点を作るどころの話ではなかった。逆にロスタイムには波状攻撃からゴールを奪われるシーンまで生まれたのだが、ここはオフサイドの判定に救われる。

 結局は1-1のままタイムアップとなったのだが、聞くところによると小林監督はその瞬間ホッと息をついて笑っていたらしい。この展開で、しかもガンバ、鹿島、浦和と上位勢が軒並み敗戦した中、唯一勝ち点を積み重ねられた事、不敗記録を伸ばせた事の意味を考えると、そういうリアクションを取ったのも当然かも知れない。


 優勝を狙っているチームにしては厳しい内容のゲームだった。しかし前田以外に故障者無く過ごし、出場停止にリーチがかかっている森島、下村、ブルーノがカードを貰わず、しかも首位と勝ち点で並んだという結果は大きい。また、大分のようないい状態のチームと当たることで次の課題がよりビビットに浮かび上がってきた。これもまた収穫。

 この時点で、数字の上ででは有るが、最終節まで優勝の行方は持ち越されることが確定した。得失点差を考えると、次節でガンバが勝ち、セレッソが負ければほぼ絶望なのだが、それでも可能性は0%ではない。ここは逆に「それ以外のシチュエーションならまだまだいける」と思考を切り替えたほうがいいだろう。それくらいの平常心を持って、横浜に乗り込みたい。




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