4/22/2007

C大阪0VS0水戸 暗中模索、五里霧中。

 負けなかっただけよしとする。そんな気になれるほどのオポチュニストは、サポーターの中でどれくらいいるだろう。今日は勝たなければいけない試合だった。銘々が自分に課せられたミッションをこなせば、少なくともこの結果にはならなかったはずだ。だがふたを開けてみればどうだろう。内容さえも伴わない、不快感ばかりが残る90分間だった。

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 森島康の負傷離脱により、監督は新しい前線を考えなければいけなくなった。熟考した末の結論は、古橋、柿谷の2トップ。サブにもターゲットになるような選手は入れず、完全に地上戦を想定したメンバーで試合に臨んだ。

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 ところがセレッソはボールを奪っても、正確性を欠くロングボールを多用する。お世辞にもヘディングが強いとは言えない二人が、上背のある選手と、勝ち目の無い空中戦をするシーンが目立った。

 特に最終ラインとボランチ、さらに言うなら宮本、前田にボールが渡ると、途端に展開が止まってしまう。相手にプレスをかけられると、苦し紛れに長いボールを入れたり、横パスに逃げたりで、「ミトナチオ」を体感する事さえできない。

 さすがにゴールキックはサイドの選手に流したり、酒本に合わせたり(前線で唯一真っ当な競り合いが出来るマッチアップはここしかなかった!)と工夫していたが、それにも限度がある。


 別に前線にいる二人のポテンシャルが低いわけではない事は、たまにボールが落ち着いて、足元にまわってきた時を見れば易々と判った。古橋は相変わらずパワフルで、献身的なプレーをしていたし(あまりに「過ぎる」場面もあったが)柿谷は危険な存在だった。初先発の中山も、アグレッシブなプレーが目立った。酒本は連戦疲れからか精彩を欠いていたものの、キチンと生かすバックが存在していたら、もう少し見せ場があったかもしれない。

 ただ前が頑張っても、後ろとの連携が出来ていなければ、チームにはならない。一人流れから取り残されても劣勢になるサッカーというスポーツで、それは致命的なことだ。前半終わってスコアレス、決定機などというものは皆無に等しかった。


 さすがに不味いと感じたか、都並監督は後半頭から二人の選手を投入した。なかなか納得のいくプレーが出来ない酒本に代えて丹羽が入り、上がり目になる中山とのバランスを調整。中央にはパスの出せる濱田を入れて、ロングボール一辺倒の攻撃にメリハリをつけようと試みた。

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 しかしこの荒療治も、効き目が薄い。例え中盤を入れ替えても、ボールに触れる事が出来ないのだから、当たり前といえば当たり前なのだけれど。

 寧ろ水戸の攻撃が、よりシンプルになり、スピードが出てきて、迫力を増していった。前田のところを狙えばいい、藤本の後ろを突けばいい、素人目にもその意図は明確だった。

 余りに前田ばかり批判するけれど、今日の前田は生観戦して観ていた中で、過去最低の出来だったように思う。普段の前田はこんなものではない。もっとハングリー精神に富み、果敢で、失敗を恐れないプレーをする選手だ。それが何故こんな出来に終わってしまったのか、しっかりと考えておかなければ、セレッソは貴重な財産を失ってしまうだろう。

 ともかく、選手交代も効果無く、丹羽と中山をポジションチェンジさせても流れが変わらない。歓声などまるで聞こえない後半戦だった。あっても一、二度程度だったか。悲鳴とヤジは、それは数え切れない程あったけれども。


 最後の交代には、流石に萎えた。中山アウト、苔口イン。

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 相手はキチンとスペースを消していて、コンパクトな組織を構築し、さあ来いと待ち構えている。そこに足が持ち味の、しかも余り調子が良いとは言えない苔口を入れて、何が変わるというのか。パワープレーなら、少しは合点がいく。しかし、これは無い。


 結局このまま見せ場無く、淡々と試合が終わってしまった。選手がスタジアムを一周してくる。バックスタンドでは辛辣なヤジとブーイングが飛んだ。ゴール裏は拍手が多いように思えたが、流石にサポーターの意識も統一できなくなってきたという事なんだろうか。皆が慣例のように、形だけの礼をくれたところで、嬉しくもないし、満足など出来ないし、気持ちを落ち着かせる事も出来ない。

 そんな覇気の無い選手達を見ていて、私はふと、去年の最終戦の後、メインスタンドで、タバコをふかしながら社員と談笑していた出原社長の姿を思い出した。皆の危機意識が、少しずつ薄れていっている。負けても分けても、悔しがるでも無く、ルーティンワークのように挨拶をするだけ、そんなメンタルではJ1への復帰などおくびにも出せないし、J2で生き残っていく事も難しくなるだろう。


 皆が早々にメインスタンドの影に消えようとする中、ただ一人柿谷だけが、ゴール裏に深々と頭を垂れていた。

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 彼のこの気持ちが、セレッソに残された最後の希望なのだろうか。17歳の背に全ての期待が込められているのだとしたら、それは余りに過酷で、残酷な話だ。

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