さあ、そろそろダービーウィークで気もそぞろになってきました、仕事が手につきません。いつもついてないけど、いつにもましてついてない。ガンバサポさんも偵察に来てるのかな?ということで、今までのセレッソを少しおさらいしておくか。
今年はみんながよくやっていて、誰がヒーローとか言えないチームに仕上がっているけれど、特に何か書くとすれば、茂庭と家長、この二人は外せない。
茂庭はもともといい選手だった。体躯もあるし、スピードもある、相手との1対1にも強い。こういうセンターバックはなかなかいない。
ただFC東京の城福監督はDFラインからの組み立てにもこだわった。センターバックであっても守備だけではなく、フィード能力、攻撃の第一歩となるパス出しを求められた。茂庭はそれができなかった。加えて怪我もあった。出場機会が減り、FC東京での居場所は少しずつ無くなっていった。
1月、チーム始動の時に南津守で見た茂庭は、青赤のユニフォームを着ていた頃に比べて少し所在無げな様子だった。移籍初日ということを差し引いてもイメージしていた明るい表情は無く、むしろ暗いとさえ感じた。求められていたプレーができなかったことで自信を失っていたのかもしれない。
最初はそれに加えて、レヴィーの指導法にも苦労していたようだ。これまではチーム内で細かな決めごとがいくつもあり、その縛りの中でプレーしていた。相手がボールを持った時はこう。ボールホルダーがこのラインを越えたらプレスをかける。サイドバックとの連携は…。
レヴィーはそうしたルールを殆ど設けてはいない。放任というか、良くいえば自主性を重んじる指揮官。開幕からJ1の壁にぶつかり、思うような結果が得られないでいても、動かない。
茂庭が変わり始めたのはそこからだったと覚えている。練習試合の後で上本や他の守備陣を呼び、汗も拭かずに大きなジェスチャーで問題点を話しあうようになった。青白かった顔はいつの間にか紅潮し、精気が戻り出していた。ピッチ上でも右往左往するアマラウをどやしつけて位置取りに注文をつけるようになった。
確かにFC東京では監督の求めることができなかったかもしれない。でも自分はまだサビつくような選手じゃない。持ち味の粘り強い守備がサポーターの信頼を勝ち得た頃、セレッソは「堅守」のチームと呼ばれるようになった。アウェー鹿島戦、強力な相手攻撃陣を封じた茂庭は、上本と固い抱擁をして喜んでいた。その表情はリーダーとしての強い意志に満ち溢れていた。
家長は「居場所」を求めてずっとさまよっていた。ピッチの上でも、チームの中でも、Jリーグの中でも。才能があることはみんながわかっていた、ただそれを満足に発揮できないでいた。ガンバでも大分でも様々なポジションを試したが、うまくいかないでいた。
若いころに天才と言われ、次代の日本を担うのではともてはやされながら、いつの間にか消えていった選手はたくさんいた。家長もそんな一人だと思われ始めたころ、大分が降格。家長は流れ着くようにセレッソにやって来た。
この移籍はセンセーショナルに取り扱われた。ガンバ一筋で育った選手がよりによってダービーの相手になるのだから、当たり前と言えば当たり前なのだけれど、セレッソの家長として定着するまでには随分と時間が必要だった。起用も当初はリードしている場面での逃げ切り要員に限定されていた。
ターニングポイントは、エース香川の移籍。セレッソの攻撃陣に大穴が空いた、キープ力のある2列目がいない、埋められる人間は家長しかいなかった。恐らく「家長でもいい」ではなく「家長でなくてはダメだ」という起用をされたのは、これが初めてではなかったろうか。家長は清武、乾とともに攻撃の核としてピッチに立つようになった。
メディアが報じている情報を見ている限り、レヴィーはこの攻撃陣に対しても事細かな注文はつけていない。お互いがもう少し近くでプレーするように、とか、もっとゴールを意識しろ、とか、意識付けの助言がある程度。彼には自由と、自由であるが故の責任が与えられた。
その壁を乗り越えられたから、今のセレッソがあるし、今の家長がいる。2列目は香川依存から抜け出し、より自由闊達にプレーするようになった。彼のキープ力、パスセンスは欠かせない。シーズンを通してのプレーがほぼ初めてなので試合によってパフォーマンスに波があるが、それでもスターターとして最低限の仕事はしてくれている。アウェー京都戦では殆どの時間消えながら、それでも決勝点をたたき込んでくれた。試合後「家長ダンス」を踊るサポーターの前にあいさつに来てくれた家長の顔には、はっきりと自信が表れていた。
デラシネのような彼であるから、今後のことはわからない。ただ少なくとも俺達と過ごしているこのシーズンが彼にとって素晴らしい経験になることは間違いない。
アドリアーノ、アマラウ、乾、松井、二人以外にも今まで評価されなかった才能達が、セレッソで輝いている。特別な戦術など何もない、むしろその点ではクラシックであるとさえ感じる。それでも今この位置にいられるのは、人の自主性と才能を重んじ、それを最大限に引き出せるチームの気風があればこそだ。そして、俺はこのチームを誇りを持って愛している。だからこそ、このダービーは落とせない。
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