天皇杯を観ていると、ずっとずっと昔のことを思い出す。自分と彼女の分のチケット(貧乏学生だったから、もちろんゴール裏)を買って、お金を少しでもためこんで、ボロくなったレプリカと、これだけははりこんだタオルマフラーで着飾って、バカでかい長居スタジアムに二人で行く。まだスタジアムグルメなんて無かったから、長居の町で何か買い込んで、スタンドに。ゲートをくぐると光の世界で、何もかもが眩しかった。
ああ、モリシがいる。あそこでふてくされてるのはアキだな。天才肌の米倉。空中戦に強いって触れ込みだったのにそもそもボールの落下点まで行けないでくの坊だったジャン。蔵田は今日もぎこちないな。下川はもっとぎこちない。でもみんな大好きだ。愛するセレッソの選手なんだから。弱かろうが、ユニフォームが変だろうが、そんなことは関係ない。この町が好きで、このチームが好きなんだから。
あの日のように、オレはパリーネでおいしそうに焼けたパンを買い込んで、鼻歌を歌いながら長居の町を歩いていた。変わったのは、彼女が家内になって、子どもが生まれて、だから一人で観戦するようになったことと、スタジアムが変わったこと、コールリーダーも変わったこと(オレが観戦していた時はもっとイカツイ兄ちゃんが吠えてた!)それから新しいヒーロー達がチームを強くしてくれたこと。それくらい。
夕闇が迫って、照明に火が入る。そうすると夢の世界。
今、日本中にクラブチームがある。Jを目指すチーム、それに立ちはだかるチーム、少ない予算の中から夢を追うチーム、それぞれにいろんな人の思いを背負って、ピッチに立っている。一昔前には予想できなかったほど、サッカーは日本に根づき始めている。まだまだマイナーではあるけれど、あの頃のオレのように、地元に、そのクラブに愛と情熱を持っているサポーター達が確かにいるのだ。そのなんとありがたい事か!
試合が終わって、精も根も尽き果てた富山新庄の選手達は、その体を引きずりながらも、セレッソサポーターのいるホームゴール裏に、そしてメインスタンドに挨拶に来てくれた。
彼等に「富山新庄!」とコールをしたのは、決して情けからではない。ひたむきに走った彼等と、彼等を支えているチームに、サポーターに、昔の自分と同じ想いを感じたからだ。
富山新庄だけじゃない。日本にある様々なスポーツ、幾多あるチーム、その全てにエールを。応援する喜びを。
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