埼玉スタジアムでの「事件」
3/8に行われたJ1リーグ第2節、浦和対鳥栖戦で浦和サポーターが掲示した横断幕が、日本サッカーに大きな影響を与えている。
ホーム側ゴール裏の中心、209ゲートに人種差別ともとられかねない(Jリーグや浦和の社長からの発表を聞く限り実際そうだったようだけれど)「JAPANESE ONLY」という横断幕掲示が成された。レイシズム(人種差別)は国籍、性別、年齢、信仰の差別などと並んで許されざる行為のひとつで、これが多くのサポーターが集まったスタジアム内で成されたことは大きな問題だ。
事態を重く見たJリーグは3/23のJリーグ第4節、埼玉スタジアム2002で開催される浦和対清水戦を無観客試合とすることを決定。浦和レッズでも横断幕を掲示した本人、所属サポーターズグループへのペナルティ、期限を定めない横断幕、フラッグ、ゲートフラッグ掲示の禁止を発表した。
と、いうのは現時点でおよそどこのニュースメデイアでも報じられているところ。6万人収容の埼玉スタジアム2002で無観客試合となると、最大で1.1億円の入場料収入が消えることになるという。サポーターが地域に落とす飲食費、交通費、グッズ収入なども考えれば「被害」はこれだけではすまないだろう。たった一枚の布切れと黒いカラースプレーひとつでこれだけのお金が消えたということになる。
しかしもっと大きいのは、これによって日本におけるサッカーという存在の信頼感が失われてしまった、ということだ。
失われた信頼
サポーターを自称する俺達のような存在なら「あのグループだから」「あそこだから」と切り分ける頭を持っている。
けれど日ごろサッカーに触れていない人たちからすれば「サッカーだから」というラインで切り分けられてしまう。セレッソだから緩いとか、浦和だから過激だとか、そういう考え方は持たない、サッカーという大きなマスで語られるのだ。
ようやっとブームという流れをつかんだセレッソや、地域に根ざし始めた他のクラブにとって、この事件は大きな障害になる。長い時間をかけて「おらが街のクラブ」と認知されてきたところでも、まだまだ理解が行き渡っているわけではない。リーグ連覇を果たした広島の市長が「2位でいい」と発言したことを覚えている人も多いだろう。
そして、クラブに人が来なくなる、経済効果が少なくなるということ、そしてサッカーに対する悪いイメージが浸透するということは、スポンサー離れの決定打になりかねない。今でさえ赤字に苦しむクラブが存在する中、むしろこちらの方が大きな問題だ。21年をかけてJリーグを頂点とするサッカー文化を広げてきた中で、それ自体の根幹が揺らぐ大きな危機なのだ。
サポーターはサポーターとしてのアクションを
Jリーグは無観客試合、浦和は当該サポーターと試合運営のペナルティというアクションを起こした。では、俺達サポーターにできることはなにか?
これは持節であるけれど、俺達ができる事は二つしか無いと考えている。一つは「スタジアムが安全で快適で、なにより素晴らしい場所であること」をもう一度知らしめること。
どれだけの時間と労力をかけても、後に続く新しい観客、ファン、サポーター、スポンサーに日本のサッカーの魅力と安全性を再認識してもらうこと、そのアクションをずっと続けていくこと、途切れさせないこと。それが地道ではあるけれど、確実で、まっとうなことではないかと。
俺は緩いサポーターだから、日本中のスタジアムや施設を巡ってきたわけではないけれど、少なくとも自分が足を運んだスタジアムや施設、地域、サポーターはそれぞれに個性があり、魅力的で、温かかった。それは、浦和のサポーターであってもそうだった。これを一人でも多くの人に知ってもらう他はない。
今一つは、クラブが違っても、例えそれがダービーの相手だとしても、自らが愛するチームと等しく他チーム、他者の存在を認めること。
確かに俺はセレッソサポーターであるから、ガンバが負ければざまあみろと思う。でも、無くなってしまえとは思わない。無くなってしまったら困る。連中以上に、コテンパンにやっつけることを楽しみにできる相手なんていないのだから。
単純に考えてみればいい、自分たちのクラブだけで試合はできない、リーグがなければ順位を争えない、栄冠をつかみとる歓喜も、苦しみを分け合う時間も味わうことなんて出来ないのだ。それは、どのチームだってそうなのだ。
だからといって好きになれとは言わない、ただ「認める」それだけでいい。他のクラブは憎むべき相手であると同時に、消えてしまっては困るグループの一員なのだ。それくらいの気持ちでいれば「ONLY」なんて書く気も失せるはずだ。
つらつらと独り言を書いてしまった。同意してくれる人も、違う意見を持っている人もいるだろう。けれど、一人でも多くの人が「日本のサッカーをよりよくしたい」と願っているのなら、それはそれで希望のある話だと思う。それぞれがそれぞれに、もう一度自分が愛してやまないスポーツのことを考えてみよう。
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