41' SUCHAO NUTNUM (C)
65' YAMASHITA TATSUYA
88' YAMASHITA TATSUYA
エースが決めきれず、キーパーも不調。チーム全体のテンションが低い中、2人の選手がよく粘って、大事な大事な勝ち点1を得ることができた。
スターティングメンバー
フォルランは帯同せず、1トップは柿谷曜一朗に、代わってトップ下は長谷川アーリアジャスール。安藤淳がベンチ入り。
ラッシュが空振りした前半
セレッソは立ち上がりに飛ばしていた。先にリードを奪い、守備ブロックを下げて守りを固め、柿谷の一発に懸ける。去年までのプラン、スタイルに近いやり方だった。試合会場が日本なら先ず出方をうかがうというプランもあったろうが、灼熱のタイでそんなことをしていては体力が奪われる。ランコ・ポポヴィッチ監督の考えは間違っていなかったと判断する。
ただ誤算は、エース柿谷が不調だったこと。ピッチに慣れていないか、体調があっていなかったか、あるいはその両方か。トラップが合わない、パスがズレるというらしくないプレーが見られた。決定機も二度作ったが、一度はミス、もう一度は相手キーパー、シワラックのファインセーブにあった。
さらに言えば、前半は南野拓実とキム・ジンヒョン、丸橋祐介という攻守の要が揃って不出来だった。
セレッソは攻撃時、相手の2トップと数的同数を作られないように、山口蛍か扇原貴宏のどちらかが下がって3バック気味にし、両サイドが上がる。もしくは酒本憲幸は残って、ダブルボランチは並列になる。とにかく最終ラインで数的優位を作ってポゼッションを上げる選択をする。
ここで攻撃の核になるのは左サイドの南野、丸橋の突破と、右サイド杉本健勇のポストプレー、特に左サイドはともに4ゴールをあげたJリーグのホーム清水戦、ACLのホームブリーラム・ユナイテッド戦で大活躍した。
しかし、長居で惨敗したブリーラム・ユナイテッドも無策ではなく、ここはしっかり人数をかけて、とにかく南野に前を向かせない守備を徹底していた。ラッシュがうまく行かなかったのにはそれなりに理由がある。
そうして攻撃が不発に終わり、中盤が少し緩んだところで、この試合散々苦しめられたロングボール攻撃が始まる。
セレッソはスコアが優勢の時以外は、なるべく選手間の隙間をなくし、4-4-1のブロックを作って高く保つようにする。そして4と4のラインに入りそうなボールを山下達也とゴイコ・カチャルが出足よく奪うのがパターン。これができている時のセレッソは調子がいい。
もちろん最終ラインの裏にボールを入れられればピンチになる。しかし大抵の時は運動量の多い中盤が相手にプレスをかけているので、ボールの出し手は封じられ、いいボールは蹴られない。
だがこの試合では中盤の4-1のラインの動きが緩慢で、攻撃に入ればノッキング、守備の際には前からのプレスに行けないという有り様だった。なのでブリーラム・ユナイテッドは長いボールをひたすらカルメロ・ゴンサレスに当てていく仕掛けが出来ていた。
その上、セレッソは不用意なファウルでティーラトンにフリーキックを決められて先制を許す。およそ考えつく最悪なスタートだった。心身ともにダメージを受けたセレッソは、決定機を1、2度作ったものの柿谷、長谷川がともに決めきれず、さらに反撃を食らってスチャオにボレーを決められる。シュートコースは甘かったが、キム・ジンヒョンが珍しく反応を遅らせるミス。2-0での折り返しは絶望感さえ感じた。
「遅れてきたヒーロー」が活躍した後半
後半、攻守に精彩を欠いた丸橋が下がり、安藤淳が左サイドで登場。
さらに後半8分に山口蛍を下げてミッチ・ニコルスを投入、システムを4-4-2に変える。
この時間ですでに両チームの動きが悪くなっていて、中盤でボールカットをするいつものスタイルはとれない状態。攻撃は単発のドリブルか長い縦パスだけという展開になっていた。ボールが飛び交っている下に選手を集めても効果は薄い。それならば空中戦で勝っていた杉本健勇を柿谷の近くに入れ、落としたボールを拾ってもらう方が分がいいという判断。
それでもセレッソはアタッキングサードで余計な横パスを繰り返し、流れの中からは効果的な攻めが出来ずじまいだった。
去年のセレッソならここで手詰まりだったろうが、今年のセレッソにはもうひとつの武器が残っていた、セットプレーがそれだ。リーグ戦では9得点中3得点がセットプレーから、この試合でもこの飛び道具で流れを引き寄せた。
後半20分には、右サイドのコーナーキックから山下が文句なしのヘディングをゴールに突き刺した。これで2-1、ブリーラム・ユナイテッドの動きが少し鈍り始める。そうなってくると、今までがんじがらめにしていた南野へのマークも緩くなるので、セレッソはスピードのある攻撃を仕掛けるようになった。
その流れにダメを押したのは楠神順平の投入だ。
今まで結果を残せなかったドリブラー。しかし今日は印象に残るキレのある動きを見せてくれた。
スピードとクイックネスを持つ楠神のドリブルはファウルでしか止められない。そうするとセットプレーが増え、チャンスが生まれる。試合終了かと思われた際の起死回生の山下の2点目も、楠神のドリブルからの流れだ。
こうして絶望のどん底から貴重な勝ち点1を持ち帰ることになったセレッソ。ポポヴィッチ監督も終盤1ボランチ(あるいはミッチ・ニコルス、長谷川の超攻撃的ダブルボランチ)を採用するなど、積極的な采配が見られるようになった。雨降って地固まると言うが、この苦しかった戦いが、若いチームによい効果をもたらしてくれると信じる。
さあ、日本に帰って来い。
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