12/11/2005

千葉2VS5C大阪 呪縛からの脱出。

 セレッソの歴史の中でも、この一週間は実に重たく、苦しい時間だったと思う。悲しみであったり、悔恨であったり、恐れであったり、およそ人間が感じられるありとあらゆる負の感情が、チームを包んでいたはず。

 それらを封じ、前を向く為には、勝利がどうしても必要だった。「このままでは終われない」そんな覇気をはらんで、イレブンはピッチに散った。


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 ファビーニョは体調不良(あけだけ寒さが嫌いだったら風邪の一つもひくだろう)、ゼ・カルロスは最終戦の負傷が未だ癒えずで、外国人選手はブルーノだけとなった。西澤も負傷で離脱、フルメンバーからは程遠い布陣だったが、試合運びの上手さは間違いなく今年のセレッソのそれだった。


 千葉が2バックで臨んだ事も幸いしたと思うが、とにかく前3人の守備が凄まじい。少しでも可能性があれば恐れずにチャレンジする姿勢にはただただ脱帽。前が必死で頑張れば、後ろはかなり楽になる。NHKのアナウンサーの「今日の森島は実に生き生きとしています」というコメントも当然という働き。

 攻撃においては2バックの両サイドのスペースを有効利用。左の酒本、右の久藤が果敢にアタックしていった。


 それでも前半は試合の流れがかなり流動的だったように思う。1点の恐ろしさを知るあまり、肝心な場面で萎縮してしまったシーンも見られたし、千葉もタイトルホルダーの名に恥じない攻撃を仕掛けていた。森島の先制点が生まれた後にも際どいシュートを浴び、危うく同点という場面が(これはポストに嫌われたのだが)。


 この流れをこちらに引き寄せたのはブルーノ。最終戦に出られなかった悔しさを激しいプレーで体言、攻守に大車輪の活躍を見せる。前半終了間際に得たPKを決めると、いよいよ勢いが止まらなくなってきた。

 前のプレッシングで相手のパス精度が乱れたと見るや誰よりも早く飛び出してインターセプト、そのまま持ち上がって攻撃の起点となる。そんなシーンが数えられないほど有り、またそれが得点に繋がった。彼のアグレッシブなプレーがセレッソに絡みついていた呪縛を取り除いたのだ。黒部の粘り腰、古橋の鮮やかなミドル、シメは負傷していた筈の前田の美しいボレー。得点の度に、セレッソの選手達に明るさが戻っていく。

 録画の筈なのに、結果は知っているのに、私は泣きそうになってしまった。選手は、本当に辛かったんだろう。気を利かせてくれた家族やスタッフ、サポーターのその想いも、重圧になっていたかも知れない。でも大丈夫だ。もう大丈夫だ。セレッソが目指しているサッカーは間違っていなかったんだ。


 2失点はご愛嬌、などと甘く締めるわけにはいかないが、久しぶりの5得点。悪い気持ちはしない。何より点が欲しい時にキチンと点が取れるという自信がついたのは良い事。

 もう一つの収穫はここ数試合課題になっていた「モリシ抜き」になった時の布陣を小林監督が模索し始めた事。

 勝負がついた後半20分辺りから宮原、徳重、苔口を投入したのだが、その時くさび役だった黒部を下げて宮原を司令塔に、さらに徳重、古橋とスピード系2枚をトップに持ってきた。

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 森島が抜けると前線でのチェイシングが甘くなり押し込まれる。その打開策としてスピード豊かな選手を配して前線の運動量を極力落とさないようにする。そしてカウンターの際には宮原のパスでその前線を走らせる。これはなかなか面白いアイディアだと思う。実際宮原のパスを受けた徳重がキーパーまでかわし、ゴールまで後一歩に詰め寄った場面が生まれている。今後もこのパターンは使えるだろう。


 とにかくセレッソにとってこの一勝は特別な価値が有った。「あの試合」で無くしていたものを取り戻し、さらに一歩前に進むことが出来た。天皇杯では上位に食い込んだ経験と実績も有るし。とにかくこの勢いを大切にして、準々決勝に臨んでもらいたい。


 

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