日曜日、テレビで「悪人」をやっていた。
この作品の舞台は九州、福岡、佐賀、そして長崎、俺の故郷だ。
主人公、清水祐一は長崎の海に面した村に暮らしている。灰色の海、灰色の空、眺めているだけで挫けそうな鬱屈とした風景を見ながら、日々を生きている。
彼は過ちを犯し、たくさんの人の人生を狂わせていく。憎んだ人の人生、その人の回りにいる人の人生、そして、愛した人の人生も。
悲しいのは、彼が愛されることに慣れていないから、愛することさえできないということ。
俺の周りにも、子供の頃愛されなかったばかりに、好きな人にどうしていいかわからないで、苦しんでいる人がいるのでよく理解できたのだけれど、その描写の細かさ、正確さは凄みさえ感じる。
この不器用さは、俺の中にもある。たくさんたくさん、傷つけてはいけない人を傷つけてしまって、自己嫌悪して、鬱屈したまま日々を暮らす、これを延々と繰り返す。妻夫木聡は難しい役をよく演じている。
長崎には2つの顔がある。観光地としての華やかさ。
そして、九州の最果てにある、寂れかけた地方都市としての物悲しさ。
昔は端島(軍艦島)や高島の炭鉱が賑わっていたけれど、今は、その面影もない。造船業も振るわない。華やかなごく一部の街角以外は、静かで、寂しくて、誰かに心の中を埋めてほしくなるほど。この悲劇と彩度を落として描かれた九州の風景は、悲しいくらいにマッチする。
そう、この物語は長崎が舞台だからこそ成立しているのだ。
もし見逃された方は、ぜひレンタルなりして観ていただきたい。いつもは洋画ばかりみているけれど、この映画は素晴らしいと、迷いなく薦められる、久しぶりの邦画だ。
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