試合終了間際、清武がモロッコのDFラインの裏に上げたロビングのパスは、常人では届かないはずのとんでもないものだった。
ただ、日本には規格外の速さを武器にした永井がいて、この時間に及んでも人外の足を残していた。パスに追いついた永井が、好守備を見せていたモロッコGKの鼻先でチョンとボールに触れる。穏やかなシュートはふんわりと優しく、ゴールネットを揺らした。
日本にとっては、中田英寿とフィリップ・トルシエが作り上げたチームが果たして以来、突破できなかったオリンピックグループリーグ。その苛烈なリーグを、1試合残して通過したのだから、日本人としてこれ程嬉しいことはない。
しかしセレッソサポーターとしては思いは複雑。これで扇原貴宏、山口螢、杉本健勇が札幌戦に加わる可能性がゼロになった。残留争いを続けている中で、そして、ボランチ、ターゲットマンに人材を欠いた中で、我慢する時間が伸びていってしまったというわけだ。
これで万が一のことがあれば、サポーターとしてはやりきれない。
ただ、捉え方を変えてみれば、これはチャンスとも言える。少し無理矢理に考えてみよう。
ここを乗り越えると、世界を相手に戦った経験十分な戦力が一気に帰ってくる。しかもウィークポイントに的確に。そしてバックアップメンバーも夏の厳しい連戦を経験して底上げができている。その状態で残りの試合を戦えるのだ。
そして残留が叶えば、実力、人気の伴ったアイドルが、入場料収入、スポンサー収入を底上げしてくれる。そうなれば少しはまともな状態で来期以降を戦えるはずだ。
今は、その「黄金時代」を築くための試練だ。とてつもなく厳しく、下を向きたくもなるが、産みの苦しみというのは、えてしてそういうものだろう?
チームが勝てないのなら、サポーターが勝たせるのみ。やってやろう。
とりあえずコイツを倒さないといけないのは、ちょっと怖いけど。
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