国立競技場を、2019年のラグビーワールドカップに合わせて、8万人収容の巨大スタジアムに建て替える、という話が進んでいる。
新国立競技場
最終審査に残ったプランは、どれも夢の御殿のようで、これはこれで結構な話だと思う。けれど、スタジアムという施設に、本当にこれほどのギミックが必要なのかなという気持ちもある。そして、美しくはあるけれど、スタジアムに必要ないろんなものが抜けてるなというプランもあり、老婆心ながら心配している。
ラクビーワールドカップの試合会場としては他にトヨタスタジアムや札幌ドーム、ユアテックスタジアム仙台(ワールドカップの時はネーミングライツが使えないから仙台スタジアムになる)、秩父宮ラグビー場、ニッサンスタジアム(横浜国際競技場)、レベルファイブスタジアム(東平尾公園博多の森球技場)
関西だとホームズスタジアム(ウイングスタジアム神戸)
それに長居スタジアムの使用が予定されている。
トヨタスタジアムもホームズスタジアムも(規模感は別にして)長居以上に豪奢な作りで、世界大会を開くに十分だと思わせる。けれど、こちらの二つのスタジアムも、新国立競技場の一部のプラン同様、やはり足りないものがある。
ぶっちゃけると、これらのスタジアムには、天然芝のコンデイションを維持するだけの日照と風量が圧倒的に足りない。
特に屋根とスタンドの間をみっちりと防音用のアクリル板で覆っているホームズスタジアムのピッチコンディションは劣悪だ。スパイクをはいた選手が少し踏ん張っただけでベロリと芝生がめくれ上がる。
トヨタスタジアムは半地下ではあるものの、2階席の四隅に大きな切り欠きがあるため、まだ風通しがいい。それでも芝生がいい状態だとは、お世辞にも言えない。
逆に、スタンドがピッチから遠く、球技観戦には不向きと言われている横浜国際競技場は、その分日光と風とが十分に確保され、ピッチコンディションがよい。なんとも皮肉な話だけれども。
多分どのスタジアムも、洋芝が生育するのに最適な気候の西欧、北欧で建てられたものなら、こういう問題は出なかったろう。実際、キム・ボギョンがいるカーディフのミレニアム・スタジアムなどは、日本のどのスタジアムよりも密閉されているけれども、芝生がどうこうという話はない。
国立競技場のデザインコンペティションに応募された国内外の建築家の方々は、欧州などとは明らかに違う「日本の風土」について、どの程度理解されているのだろうか?
それを抜きにして会場を建築したとしても、選手の最高のプレーを引き出すことなど不可能だ。大分トリニータがJ2に降格した2009年には、同じく風通しが悪い大分銀行ドームの劣悪なピッチで、多くのプレーヤーが負傷、大幅な戦力ダウンを余儀なくされている。サッカー以上に芝生に負担がかかるラグビーで、芝生のコンデイションが疑問視されるスタジアムを建てればどうなるか?
もし2009年の大分で起こったことと同じことが、2019年にも起こるとしたら、この10年ほどの間、日本のスタジアム建築も、スポーツ文化も、何も進歩していないと内外に広めるのと同義だ。
スタジアムを建てるのに、観る側の快適さ、見た目の美しさばかり追求して、本来重きを置くべきプレーする側への配慮を欠いてはいけない。それはまわりまわって、関わった全ての人間にとってのマイナスになる。本当にすばらしいスタジアムとは何か、再考できないものだろうか。
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