2014年8月30日(土) 19:04キックオフ[ 観客 21,091人 ]
得点者
前半8分 南野 拓実(C大阪)
後半26分 シンプリシオ(神戸)
後半45分+2 森岡 亮太(神戸)
劇的な逆転劇?違う、伏線はあちこちに張り巡らされていた、これは必定の結果だった。
「私のサッカーは全員が機能しないと勝てない」
マルコ・ペッツァイオリは就任時、確かこんなことを言っていたと思う。しかし昨日は彼自身が、ピッチから戦えない選手を下げることをしなかった。そうして語っていたとおり、勝てずじまいになった。
スターターは下記の通り。システムは4-3-1-2で、ボランチはアンカーに扇原貴宏、右に平野甲斐、左に長谷川アーリアジャスール、トップ下に出場停止明けの南野拓実が入り、カカウとディエゴ・フォルランが2トップ。
これは神戸の攻撃を窒息させるためのシステムだった。
神戸はボールを持つと、ボランチのチョン・ウヨンが下がって3バック気味になり、シンプリシオは残る。サイドバックが押し出されるので3-3-2-2のようなスタイルになる。こののディフェンスラインに2トップと南野を当て、ボールの出どころを封じる考えがあった。
これは前半非常に機能した。ここ数試合でやっている「目の前の敵を捕まえておく」というシンプルな考えが選手の動きを軽くしているように見えた。攻撃でもペッツァイオリ体制になって、長らく停滞していたのがウソのように動きが素早い。特にカウンターの起点になった南野の動きは白眉だった。平野のうまい飛び出しからシュート、先制点も素晴らしかった。
このゴール以外にもフォルラン、南野、カカウの前三枚が作る速攻で何度も決定機は作れた。これまでは決定機すらなかなかなかったことを考えると大きな進歩。しかし、決めきれない。もどかしさは募るばかりで、結局その代償は最後に支払うハメになった。
また、前半のプレーで藤本康太が肩を痛めて負傷退場、染谷悠太をスクランブルで投入しなければいけなかったのも痛かった。ペッツァイオリのサッカーは運動量が生命線で、交代カードでも運動量が落ちた選手を入れ替えることが多い。そのカードを前半で1枚切ることになったのも後半の伏線だった。
その後半、徐々に神戸が主導権を握り始める。理由は簡単で、前三枚、特にフォルランの運動量が著しく低下したためだ。攻撃の一歩目を封じる事ができないでいると、後ろの全員がとてつもない負担を受け持つことになる。3ボランチもアンカーの扇原以外は攻撃的な選手で、フィルターとしての役割はあまり期待できない。
こういう時に(その前の段階でももちろん)ブロックを下げて、ペースダウンして、いい意味での「サボり」ができないサッカーはとても厳しい。前からのプレスを90分間続けるのは無理があることで、ペッツァイオリのサッカーでは後半20分からのガス欠はお決まりの出来事になってしまった。
この流れの中で、チームを落ち着かせる存在を投入することには異論はない。後半23分、長谷川が負傷してからの新井場徹という選択も、1-0でクローズしようという意図ならば十分に納得できる。ただ守備が瓦解している根本である前線のテコ入れはなされないままで、流れを大きく変えることはできなかった。
新井場が投入された時間帯には、セレッソが組織的な守備や、そこから意図を持って速攻を仕掛けるといったアクションは起こらなくなっていた。がんばって数人が前からのプレスをかけにいっても、フォルランが動けなくなっていた分簡単に外されるようになった。勝ちに行くなら、最後のカードはこの1-0の時点で切るべきだった。しかし現実には、杉本健勇が投入されたのは同点に追いつかれモチベーションが下がった後で、しかも下がったのはまだいくらか動けたカカウだった。
これでセレッソの勝ち目はかなり薄くなってしまった。それでも選手達は個々に奮闘していたと思う。誰もタクトを振らない、信じられる指示が出ていない中で、ギリギリの戦いを続けていた。それだけに、せめて1-1で終わらせたかった。それならばまだ上を向いて戦い続けられたはずだから。
去年4位に食い込んだチームに、6億円のストライカーと2.5億円のトップ下が来て、16位という現状がある、これはなぜなのか。
いくら素晴らしい個を寄せ集めても、素晴らしい指揮官がいなければ、チームとして明確な哲学がなければ勝てないということではないのか。収入第一、露出第一、企業としては成功かもしれないが、クラブとしては不合格だ。
その収入も陰りの色が出始めている。好天で、夏休み最後の週末だというのに観客は21091人、一見立派な数字ではあるけれど、これまでの動員数から考えれば物足りない。勝つこと、観客に喜びを与えるチームを作ること、その根本を見失っていてはいけないと、気づいてはくれないだろうか。
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