前半15分 柿谷 曜一朗(C大阪)
後半45分+6 アレックス(清水)
試合間隔がキチンと開いていて、スカウティングをする時間、コンディションを整える時間がキチンととれた。アウェーであることはマイナスであるけれど、試合が開催されたのはピッチコンディションのいいアウトソーシングスタジアムで、他のスタジアムと比べても、プレーの質が下がる幅はそれほどでもなかったはずだ。
セレッソは恵まれた条件の中、95分間、ソアレス監督が目指しているサッカーを貫徹できた。
ただ一つ不幸であったのは、プレー時間が96分間あったこと、それだけだ。
スタメンとベンチ
スタメンの左サイドバックは黒木。トップ下起用が噂されていた清武はこの日も4-4-2の左サイドハーフでスタート。ベンチにはルーキー吉野が入っている。
プラン通りの前半
セレッソのプランははっきりしていた。
それはとても守備的で、去年までのセレッソを是としている人間にはとても忍耐の必要なものであったけれど、前半は実によく機能していたと思う。
相手がボールを持つと、DFの4枚とMFの4枚が二列のコンパクトなラインを作る。設定したエリアは低い位置で、これが清水のスピードあふれる二人のアタッカー、高木と大前に対するケアなのは明白だった。
清水はこの二人のアタッカーに中盤、最終ラインから長い斜めのパスを入れていくのだが、スペースがタイトになっているので、ちょっとしたパスのズレで足元に届かない。
パスの出し手と受け手の意識が入れ違ってしまったり、そうした部分で助けられることもあったけれど、とにかく攻撃がつまらない形で終わってしまうので、清水からすればかなりのストレスだったはずだ。前半、清水はシュート1本しか放てていない。
ようやく形になった攻撃陣
対するセレッソ、前半は2トップがいい形を作る。特にケンペスがいい。
今までケンペスは慣れていないハイボールの競り合いだけが仕事になっていて、持ち味が生きていなかった。けれど今日の試合ではバックから低く早いボールが入り、それをしっかり納めることができた。
ここで橋頭堡ができれば、柿谷や2列目の清武、キム・ボギョンが上がる時間ができるし、前を向いて、スピードに乗った状態でボールを受けることもできる。
また相手守備陣の視線から「消える」動きもよくできていた。一度ボールのあるエリアの反対側に膨らんでからもう一度ボックスに入る形で、前半だけで2度、フリーでのヘディングシュートを放つことができた。
その一本は前半15分のポストに当たった惜しいもの。これがうまく詰めていた柿谷のもとに入り、いい形で先制点を奪えた。
このケンペスへのクロスを放ったのは、左サイドバックとして2試合目の先発となった黒木。糸をひくような正確なキックで、前回とは違い持ち味をよく出せていた。
今まで清武のビルドアップとキム・ボギョンの強引な突破しか攻撃の手法がなかったセレッソだが、ケンペスのキープという一手が加わっただけで随分と良くなった印象がある。
もちろんまだトラップミスが多いし、スピードが足りないなど不満がないわけではないが、ここまで消化不良なプレーばかりだったケンペスに「生きる方法」が見つかった、これはとてもいいことだ。
柿谷にしてもこれがJ1初ゴール。この一つのゴールは、柿谷、ケンペス、黒木、3人の選手に「生きる方法」を示してくれた。
課題は解消されず
さて、問題は後半。
周知の通りだけれど、セレッソが今直面している問題は二つある。一つはスタミナで、もう一つは相手の選手交代、システム変更への対応の遅れだ。
低い位置で守備ブロックを作り、ボールを奪ったらそこから一気に敵陣まで攻撃を仕掛ける。この方法は効果的ではあるが、攻撃陣に掛かる負担は大きく、後半どうしてもチェイシングの量と質が落ちてくる。
そうなると次はボランチに負担がかかるようになり、最後には守備陣全体が疲弊するようになる。
この試合でもまず柿谷、清武の動きが止まり始め、全体の躍動感が失われていった。
もう一つ、システム変更に対する対応の遅れも、ボディブローのように選手のスタミナを奪っていった。
清水はスピードで突破できないとわかると、ストライカーである高原を前線に入れ、そこにサイドからクロスを丁寧に入れていくようになった。
これがちょうどセレッソの前線のガス欠と重なり、後ろから入る質の高いクロスに高原が合わせ、あわやというシーンが何度か出るようになった。そうすると、セレッソはとたんに臆病になる。
ソアレス監督はチームの活性化策として村田をトップの位置で起用する。
後半25分柿谷→村田 |
ケンペスとの連携はまだまだであるけれど、村田のスピードの生かし方として、この方法はアリだと感じた。もう少し練度を上げれば、もっと危険なプレーヤーとして輝けるはずだ。
実際裏をとったり、マークが村田につくことでケンペスがフリーになれたりと、2点目がとれそうな雰囲気があった。ここでしっかり追加点がとれていれば、このエントリーを書くスピードももう少し早くなれたのだけれど。
響いた清武の不調
個々の選手の中で気になったのは、一向にプレーのキレが戻らない清武だ。
右サイドのキム・ボギョンはあいかわらず豪快な突破で見せ場を作れていたが、清武は危険なプレーを殆ど披露できないまま、ガス欠を起こしてルーキー吉野と交代している。
清武は今までセレッソサポーターを魅了してきたアタッカー、香川や乾、家長や倉田と違い、どちらかというと味方を動かすプレーを得意としている。
だが、今のシステムでは単独での突破を期待され、持ち味が生かされないまま。使うべきトップに入る選手たちとも連携が取れず、苦悩が続いている。
後半41分 |
代わって入った吉野はプロ公式戦初出場、0-1という緊迫したシチュエーション、しかも他のプレーヤーが疲弊しきった状況での起用で、こちらも見せ場を作ることができなかった。本来は攻撃のセンスに特徴があるプレイヤーなので、そうした状況で起用された姿を見てみたい。
この時点でセレッソのプレイヤーの足は完全に止まっていて、清水の波状攻撃をしのぐのが手一杯になっていた。全員のスタミナが残っているうちに何かしら手を打っていれば、という気持ちもあるが、下手に動いて自滅も避けるべき事態だったから、なんとも言えない。
逃げ切りに失敗も
最後の交代、ケンペスを下げて金 聖基というカードの切り方には賛否両論あるだろう。
後半45分+3ケンペス→金 聖基 |
極端に守備的になったことで、逆に清水の波状攻撃を止められず、ラストワンプレーで同点に追いつかれてしまった。ここで前線でのボールキープができる播戸が入っていたら…。そう考える人は多いはずだ。
ただ実際そうして、播戸までボールが繋げられなければ流れは変わらなかったはずで、結局「播戸が…」というのはたられば論にすぎない。そうして失敗すれば、欲求不満が溜まった人間から「なぜ守備固めに金 聖基を入れなかった!」と声が出るのも想像がつく。
今2位を走るチームを相手に、無敗を続けているそのホームスタジアムに乗り込んで、95分間らしい戦い方をさせなかったこと。今まで計算できなかった何人かのプレーヤーがチームと融合し始めたことは、素直に評価しないといけない。
今日失った勝ち点2はとても惜しいけれど、今年一年のもの。そして今日チームと選手が得た経験は(セレッソのプレーヤーである限り)ずっと続いていくチームの財産なのだ。
ホーム連戦に際して
とどの詰まり、選手は監督の意図に応えるために与えられた役目をしっかりこなさないといけないし、サポーターは監督と選手を信じて跳ぶしか無い、というところに行き着く。(監督が球団の意図した采配をしていればクビが飛ぶのだけれど)
実際敗色濃厚だった清水に勇気を与えたのは、アウトソーシングスタジアムの3方から声援を送り続けた1万5千余のサポーター達だった。
セレッソは水曜にナビスコカップを、土曜にリーグ戦を、それぞれホームスタジアムであるキンチョウスタジアム、長居スタジアムで戦う。
今日の試合を悔み、ホームで勝利を願うサポーターは、どうかスタジアムまで足を運び、声を枯らしてほしい。もしスタジアムに行けないのであれば、それぞれの場所で、チームの勝利を強く信じてほしい。
チームにはチームの、監督には監督の、選手には選手の、そしてサポーターにはサポーターの仕事がある。それを一つ一つクリアすること、それが勝利するための唯一の方法なのだから。
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