週末はJグリーン堺に出かけていた。秋晴れの空は高く、海風は心地いい。遠くにあるピッチでは高校サッカー選手権の準々決勝も行われているようで、若い子達の歓声が聞こえる。
俺が見に行ったのは、その隣りのピッチで行われているKSLカップの予選Aグループ最終節、OKFC対阪南大クラブ。お目当てはOKFCのキーパー、金大選手。
金大選手とは、仕事の中でたまたま知り合った。奇縁だと思う。
最初はお互い営業マンとして名刺交換から始まったお付き合いなのだけれど、サッカーが好きで、住まいも近くて、Facebookで「友達」になった。それからも、仕事の話をしないといけないのに、「選手」としての金大という人間のファンになってしまった。
それで日曜、カメラを持って、ピッチの横からずっと試合を観ていた。
OKFCはカテゴリーとしては4部にあたる、関西サッカーリーグに籍を置くアマチュアクラブで、在日コリアン達が結束して組織された。前身は1967年からあるというから、歴史は古い。選手は皆本業を持ちながら、何とか時間を設けて、サッカー選手との二足のわらじを履いている。
他のアマチュアチーム同様、取り巻く環境は、あまり恵まれたものではない。チーム練習も満足にできないのが実情だそうだ。前節はアルテリーヴォ和歌山に0-11と大敗、この試合でも動きは芳しくなく、失点が続いた。
ハーフタイムには、暗い雰囲気の中、コーチから激が飛んでいた。失点を恐れ、自陣に引きこもるな、悔いのない最終節にしようと。
実力差はいかんともしがたく、後半も失点は止まらなかったが、気持ちは前のめりになり、ラインは高くなっていた。
後ろからは金大選手の激が飛ぶ
「下がるな!」「(ラインの間隔を)閉めろ!」
クタクタになりながらも90分間、闘いぬいた。スコアは0-12になっていたけれど、あきらめずドンドン前に進んでいくフィールドプレーヤーと、それを後ろから支えていたキャプテンの姿は、心に残った。
試合後もプロのように余韻に浸ったり、シャワーを浴びる余裕なんて無い。疲れた体で手早く荷物をまとめて、後に待っているクラブにピッチを明け渡す。
声をかけようか迷ったけれども、何か救いになればと、PKを止めたプレーが素晴らしかったこと、後半、26番の選手が起点になった時、チャンスがあったことを伝えた。
大敗した後で、疲れていたはずなのに、金大選手はやさしく笑ってくれた。 これくらいタフでないと、社会人とサッカー選手の両立なんて出来ないのだろうな。
「眼の前にあるサッカーを愛せ」「Jリーグ原理主義に天誅を」
とは、Numberでも記事が乗っていた、おなじみショッカー総統の言葉だけれど、この日まで俺はこの言葉の本当の意味をよくわかっていなかったのかもしれない。
意外なほど身近に、サッカーはある。グラウンドと、ボールひとつ、そして仲間がいれば、サッカーはそこにある。こんなに感動を呼ぶものなのに、あれほど熱中できるものなのに、まるで空気みたいにそばにある。これは、すごいことだ。
もし週末時間があるなら、Jグリーン堺や、他の施設に足を運んでみてほしい。そして、自分のすぐそばにある大切な物に触れてみてほしい。チケットを持ってスタジアムに行くだけが、サッカーという文化を通じて豊かになる方法ではないということを、分かっていただけると思う。
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