6/24/2006

W杯グループリーグ第三戦 日本1VS4ブラジル さよならジーコ。

 何度も何度も絶望の淵に立たされ、その度に奇跡的展開で失地回復してきたジーコジャパン。しかし、武運はここドイツで尽きた。高原がピッチでのた打ち回った瞬間に、魔法はとけたのだと知った。

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 前半44分までは、日本はプラン通りの試合運びが出来ていた。川口は当たりに当たっていたし、巻、玉田のフレッシュなコンビは泥臭く走り回っていた、中澤、坪井の関係も悪くなかった。2列目と前線の間が広がっていたのも許容範囲で、ここまでの日本は最良のプレーをしていた。玉田が放った初めての枠内シュートがゴールになった時は、流れは確実にこちらに向いているとさえ思えた。

 しかし、王国のプライドは、折り返しの時点でのリードすら許してはくれなかった。ロナウジーニョ、ゴール前で軽やかに、そして大きなサイドチェンジ。守備のブロックが揺さぶられると、折り返しをロナウドがヘッドで決める。「俺達はいつでも点がとれるんだ」というメッセージが、日本ゴールに叩きつけられたように感じた。


 後半の日本は、個々人、局面局面では善戦していたが、ブラジルのコントロールされた範囲内でしか動けなかった。勘所ではしっかり止められていたし、止められなかった。もう一度リードを奪おうと駆け回るが、前半のそれとは勢いが違った。疲労ばかりが蓄積されていった。

 日本の攻撃を一通り受けると、今度はブラジルが攻めのリズムを作り始める。広い展開、スピードの緩急、長短のパスのコンビネーション、ゴール前でのアイディア、そして個人の技量、まざまざと差を見せ付けられた。

 逆転弾になったジュニーニョ・ペルナンブカーノのロングシュート、ジウベルトの正確な飛び出しとシュートコントロール、どちらも今大会の日本に欠けていた要素。決めるべきところでしっかりと得点できるのが強いチームなのだという、カナリア色のメッセージ。選手の心に刻まれたのは、絶望のブルー。


 3-1からの中田浩、高原投入については、批判しない。本来なら1-1の場面で出したかったろうが、勝負どころはもう少し後と読んだのだろう。間延びした中盤に中田浩、走り回っていた巻に高原、交代箇所も合点がいく。

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 しかし高原がいきなり負傷するところまでは、誰も読みきれなかったろう。苦悶の表情を浮かべる高原に、ドイツから2ゴールを奪った時のオーラは感じられなかった。一度はピッチに戻ったが、僅か5分でベンチに引き戻された。高原と柳沢にとって、ドイツワールドカップは呪われた大会になってしまった。

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 大黒にしても、この試合は不完全燃焼だったろう。彼を生かす為にはタメが作れる中盤が不可欠なのだが、彼が投入された時には日本にそんな余力は残っていなかった。


 トドメとなったロナウドのゴールが決まると、ブラジルは3人目の交代として第三キーパーのロジェリオ・セミを投入した。どんな失点よりも、屈辱だった。そして彼を脅かす事さえ出来なかった腹立たしさ。この二つの気持ちは晴れる事無く、タイムアップの笛が無情に響いた。


 希望の船出、突然の挫折、完全な沈黙、絶望の破綻。この90分間は、ジーコジャパン4年間の縮図のようだった。もうこのチームを観ることは無い、それが一番の幸福であるというのは、皮肉な話だ。


 

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