12/10/2004

アン・ヨンハの気持ち。コリアンの気持ち。

 セレサポが心痛めていた昨日。マレーシアでワールドカップアジア最終予選の組分け抽選会が行われ、日本はイラン、バーレーン、北朝鮮と同組となりました。初戦は2/9、ホームでの北朝鮮戦。会場はジーコが希望するさいたまスタジアム2002が有力です。


 アルビレックスのアン・ヨンハはこの組分けをどんな気持ちで受け止めたのでしょう。

 アン・ヨンハはいわゆる"在日コリアン"。北朝鮮国籍を持ち、昨年には代表デビューを果しました。得点も上げるなど活躍もしているようです。ボランチの出来るMFで、ヘッドの打点も高く、セットプレーでは要注意の選手。

 しかし一度ピッチを離れると、気さくで明るい、どこにでもいる若者なのだそうです。そんなアンの下には抽選会の後取材陣が殺到。未知の国北朝鮮について少しでも情報を引き出そうとしたようです。Yahoo!のヘッドラインにもその様子が流れていました。


 以前私は"在日コリアン"の多い大阪生野でも、最も彼らが多く住む猪飼野に足を運んだ事が有ります。

 もの書きの最中に「マシソヨ〈おいしい〉」という言葉を、どうしてもハングルで書かねばならなかったのですが、スペリングが一向に分からず、いっそそこで聞いてみようと思ったからです。


 まるで韓国に来たようなヤンニョムの匂い漂う商店街を歩いていると、チヂミやチャプチェを売っている威勢のいいおばさんを見つけました。

「この人なら聞きやすそう」

 そう思った私は事情を説明し、紙とペンを渡しました。おばさんは気さくに応じてくれました。そして書きなれた様子でペンを走らせながら、少し寂しそうに、私にこうつぶやいたのです。

「でも、これ"北"のつづりだから、"南"のだと全然違うかも知れないよ」

 傍目に見ると、"北"も"南"も、同じ"在日コリアン"ですが、彼等の中でもそれぞれに複雑な思いが有るようです。

 ハングルにも"北なまり"、"南なまり"がある事は知っていました。でもそれが当事者をして「違うかも知れない」という曖昧な答えしか言えないほどの隔たりをもたらしているとはその時まで知りませんでした。

 近年「韓流」ブームと言われていますが、うわべだけなぞっていても、本当に理解しあえたとは思いません。私はこの一言で、私達が持っている問題の重さを、ほんの少しかも知れませんが、知ってしまった気分になりました。


 海を隔てているとはいえ、北朝鮮は隣の国です。しかし実状として、北朝鮮は日本にとって最も遠い国であり、日本に住む、アン・ヨンハを含めた多くの"在日コリアン"は、日々偏見や奇異の目に晒されています。

 しかし、向き合い、語り合った多くの人たちは、悪意を持った人達では有りませんでしたし、また敵意を抱いているわけでもありませんでした。

 多くの日本人が、北朝鮮という国によって、長年苦しいおもいをしなくてはいけなくなった事実は確かに有ります。しかしそこに住む人々、日本に移り住んだ人々の多くは、なんの特異な部分も無い、ごく普通の人たちなのです。


 この試合を契機に、少しでも両国の距離が近づいてくれればと思う自分がいます。もちろん試合は我等日本代表が勝つと信じていますけれど。



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