8/13/2006

C大阪0VS1大宮 ドアノッカー。

 どこの国の話だか忘れてしまったけれど、第二次大戦の時にあまりにも威力が無くて、どんなに近くから戦車を撃っても、傷一つつけられない対戦車砲が有ったらしい。それで相手の兵士たちは、その対戦車砲に『ドアノッカー』というあだ名をつけた。当たってもゴンと音が鳴るだけの、お粗末な兵器。

 今のセレッソを例えるなら、この『ドアノッカー』が最も適切なのではないだろうか。今日も大宮という分厚い装甲板に、容易く弾かれてしまった。0-1というスコア以上の完敗。


 試合が始まった直後に気がついたのだけれど、先発した前3人、大久保と柿本、それに古橋のポジション取りが、前節から変化していた。

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 一目瞭然だけれど、これは明らかに小林政権時代の3-6-1の布陣。大久保が森島寛よりも攻撃的な位置取りをしていたところ以外は、全く同じような動きだった。

 ただ悲しいかな、このメンバーでは試合のリズムを作れる人間がいない。一番ボールをロストしてはいけないボランチのところでボールをカットされてしまい、守勢にまわる時間が続く。

 それでも前半失点しなかったのは、大宮のシュートが悉くポストに嫌われたのと、選手間の信頼関係の無さおかげ。

 皮肉なことではあるけれど、ピンゴと宮本のコンビでは、そう活躍は期待できないという事を、選手全員が感じていた。「ミスもするだろうし、前に行ったまま帰ってこないかもしれないし、後ろについていなければまずいだろうな」というマイナスのイメージを、他の選手全員が共有していた。だからカウンターを食らっても何とか芽を摘みとれていた。もちろん攻撃はその分おざなりになってしまったけれど。


 一方の大宮、やはり小林大悟が光っていた。左サイドでマッチアップした柳本を、足首のフェイントだけで切り裂いたシーンでは、情けないけれど鳥肌が立ってしまた。

 もう一つ印象に残ったのは、2ラインで構築された組織的な守備。セレッソの攻撃が散発的で個人技頼りだったというところも大きいだろうけれど、組織的で、効率のいい守備を90分間続けていた。きっと塚田監督はこういう4-4-2、もしくは4-1-4-1というスタイルを目指していたのだろう。悲しいかな、今のセレッソにはそれに見合う能力と適正の有る選手も、そんな組織を育てる時間も、そしてそれを指導できるだけのコーチもいないのだけれど。


 前半を奇跡的にスコアレスで折り返すと、後半早々、塚田監督は早くも切り札を投入する。思うようにタメを作れなかった柿本を下げ、その位置にそのまま西澤が入る。

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 しかしこの交代の効果が薄いだろう事は予想がついた。ボトルネックになっているポイントが中盤である事は誰の目にも明らかだったから。単純なロングボールを放り込むだけの無責任な攻撃が、何度も何度も大宮に弾き返される。


 そんな不快感ばかりがたまる展開が20分くらい続いただろうか、さすかに痺れを切らせたセレッソは、流れを変えるべくピンゴを下げ、下村を投入する。

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 これでいくらか攻勢をかけられるかと思ったが、逆に全体のバランスが崩れてしまった。直後に起こった大宮の手数と人数をかけた分厚い攻撃。その終わりに待っていたのは、今までの助けてもらっていた運のツケを、まとめて払わされたかのような強烈なミドルだった。


 いやがおうにも攻めなくてはならなくなったセレッソだが、残り時間僅かとなっても、出足が鈍い。西澤のミドルも枠にすら飛ばず、大久保はストレスばかりを溜めていく。

 最後の交代はJ初登場の小松。パワープレー要員として西澤とツインタワーを形成する。

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 ここまで前傾した布陣であるならば、ロングボールを入れるのが定石なのだが、それでもなお、セレッソの攻撃は停滞したままだった。セットプレーになってもブルーノや前田は上がらない、横パスばかりで誰もチャレンジしようとしない、そんなプレーばかりで無駄にロスタイムを消費しているようでは、得点の香りすらしない。


 私はタイムアップの瞬間の選手達の顔を忘れない。悔しさの欠片も見せず、サバサバと挨拶をしてまわる彼らの顔を。今のセレッソは、試合に臨む前段階、準備の時点から何かが欠けている様だ。


 以前は、もし降格してしまったら、こんなにいいチームがばらばらになってしまうという気持ちが、確かに心の中に有った。けれど、ここまで変質してしまったチームを観ていると、そんな気持ちも霧散しそうになる。名波一人が加入したところで、どれほど良くなるというのだろう。何年かかるかは判らないけれど、もう一度原点から始めたほうが、セレッソというチームの為にはいいのかも知れない。

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