1/02/2005

東京V2VS1磐田 「青の時代」の終焉。 ―第84回天皇杯決勝―

 今回の決勝戦は、2つの「青の時代」が終わった事を象徴するゲームであったと思います。ひとつはサックスブルーの「青」、今一つは若さの「青」。


 テレビ観戦であった私が、まず安心したのは、国立競技場が5万の観衆で埋められていたこと。レッズサポーターのチケット買占め騒ぎは、何とか解決したようでした。新春の晴れ舞台を飾るに相応しいステージが用意されていたことに、まず感謝。


 両チームのスターティングメンバーは下記のとおり。磐田はもはやチームの代名詞と化した3-5-2の"N-BOX"。東京Vも3-5-2ですが、こちらはワンボランチ、トップ下を2枚使うシステム。

東京Vスタメン


東京Vスタメン


磐田スタメン


磐田スタメン


 両チームともパスワーク主体、中盤が持ち味のチームなので展開が目まぐるしいのですが、磐田はワンタッチのパスを多用し、絶えずフリーの選手にボールを預ける事を基本にしているのに対し、東京はしばしばドリブルなどでアクセントを持たせ、相手のリズムを少しずつずらしていく攻め方。しっかりとチームカラーが出ていました。遅攻からでも、守備陣にちょっとした油断があれば失点につながる、という緊迫感。


 立ち上がり、火蓋はまず磐田の右サイドで切って落とされました。磐田の陣内深くに東京の左サイド相馬が侵攻、何度と無く質の高いクロスをゴール前に上げていきます。

 セレサポの私はただ「相馬は良いプレーヤーだ」という事しか耳にしていませんでしたが、この試合の相馬は噂に違わぬ活躍でした。個人で持って良し、周りを使って良し。磐田右サイドの河村と福西、そして鈴木秀人でさえ、彼には手を焼いていました。

 序盤のペースは東京でしたが、百戦錬磨の磐田も、ベテラン達が要所要所で老獪さを発揮、隙有らばという構えを見せます。

 しかし先制点は、勢いに勝る東京。前半35分、セットプレーからFW平本のヘディングシュート、ポストに当たったところを飯尾がねじ込んでゴール。


 その後膠着状態が続いていましたが、東京への警告が妙に多く(個人的にはこれぐらいでイエローなの、という場面も有りました)前半終了間際には福西を止めようとした小林慶行がこの日2枚目のイエローで早くも退場。東京に暗雲が立ち込めはじめます。


 磐田のプレーヤー達の多くが、この退場で流れがこちらに向くだろうと考えたはずです。後半立ち上がりの磐田は相手が動揺しているうちに得点を奪おうと、プレーエリアを前へ前へと押し上げます。山本監督も一気にその流れを引き寄せようと、後半開始から早速中山を投入しました。

 前半はほぼタイだったボールポゼッションは、圧倒的に磐田。名波-中山のホットラインが機能し、あわやの場面が見られるようになります。


 「これは同点は時間の問題かな」という中で、しかし、東京の2点目が生まれます。磐田のパスを高い位置で奪った平本がそのままドリブル。相手DFを上手くかわしてコントロールショット。前半の決定機を逃しつづけた男の、意地の一撃。

 確かに平本が果敢にボールを奪いに行ったことは賞賛されるべきですが、奪われてしまった磐田に慢心が無かった、とは言いきれません。試合巧者が故の油断。若いが故の勇気。


 山本監督と磐田は傾いてしまった流れを再び引き寄せようと、福西をトップに上げ、川口、藤田を立て続けに投入します。プレスのかからない自陣から放たれる名波のロングパスを福西、中山が落とし、そのボールを拾っていく、なりふりかまわぬパワープレー。

 東京も必死の守備で耐えようとしますが、一瞬の隙を西に突かれ1点差。試合の行方が分からなくなってきます。


 それでも東京に混乱はありませんでした。オズワルド・アルディレスが手塩にかけて作り上げたチームは、その後の15分間を見事耐えぬき、「東京」ヴェルディに初のタイトルをもたらしました。


 ユース上がりの相馬らがチームの中心のヴェルディ。「ユース上がりはテクニックが有るが、勝負に対する執着心が無い」そんな言葉を聞くことが有りますが、今日のヴェルディには「勝ちたい」という気迫がみなぎっていました。

 辛い時間帯も、いつもなら出せないあと1歩を出し、必死にボールを追う。タイプの似た両チームの勝敗を分けたのは、この執着心であったように感じます。

 若さに経験が加わったベルディ。若き「青の時代」は終わりました。円熟期に入るベルディが今後どのような戦いを見せるのか、楽しみです。


 一方山本監督にはジュビロ再生の課題が残りました。ベテラン中心の、ゲームの流れを「知りすぎた」チームに競争心を生み出し、再び緊張感の有るチームを構築しなくてはいけません。過去の「青の時代」を、回顧する余裕は無いのです。




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