3/26/2005

イラン2VS1日本 狂った精密機械。

 勝てた試合だとは言わない、だが引き分けに持ち込む事は可能だったと思う。敗れた試合に悔恨の念が無いものは無いけれど、とりわけ悔しい敗戦ではなかったか。


 スタメンは予想通り。

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 序盤はややイランペースではあったが、ホームという事を考えればこんなものかな、という感じを受けた。

 イランの攻撃に関しては特にマハダビキアとザンディの動きが良かったように感じる。カリミも素晴らしかったが、前評判を考えると、やや物足りない。そこは日本もしっかりと守備を固めていたという事なのか。

 日本の攻撃の基本はロングボール。徹底して高原、玉田を走らせるのだが、玉田がいくらかのチャンスを得ただけで、あまり効果的ではなかった。特に高原はトラップは大きい、キープはは出来ない、競り合いに勝てないと良い所無し。コンディションの問題か。


 全体的には試合の価値のわりに凡庸な前半であったが、特徴的だったのは、ダブル司令塔の中村と中田に対する対処の違い。中村がボールを持つとハーフウェーラインあたりでも最低二人がチェックに来るのに対して、中田はかなり高い位置まで自由にボールを持てていた、というか持たせてもらっていた

 このあたりはイランの情報分析によるものだと思っている。危険な選手は早めに潰しておく、中田、加地は比較的対処しやすいので無理は避ける。実際加地、中田のサイドから危険な匂いのするボールは供給されていなかった。


 ゲームが動いたのは前半25分、何気ないところからだった。相手のチャージを受けた中村がピッチの外に出されると、チームの集中力がふっと途切れた。直後のイランのセットプレー、マークが甘い。競り合いでは肉体的なハンデが有る日本、このようなコンセントレーションの欠如はピンチを招く。ゴール前で混戦模様になると、こぼれ玉をハシェミアンに詰められ先制を許した。


 だがイランにアクシデント。ダエイが怪我のため前半40分に交代してしまったのだ。センターにはカリミが入る事になり、しばし混乱状態が続いた。日本にとって不運だったのは、この時間に攻めきれなかったところだろう。1-0で後半へ。



 後半立ち上がりのイランは務めて時間を稼ぐ事に集中していた。体躯の違いからかさすがに「中東戦法」は無かったが(むしろ相手を吹き飛ばす勢いだった)スローペースに苛立ちが募った。


 業を煮やしたジーコは前半走り回ったために足が止まり始めた玉田と柳沢をチェンジする。後半15分柳沢イン。

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 この試合で一番の収穫、それは柳沢だったろう。正直交代した時は頭を抱えたが、質の高い動きで、パスワーク主体の日本らしい攻撃を引き出しはじめた。


 効果はすぐに現れる。柳沢投入から5分後の後半20分ごろ、左サイドに流れていた中田のふわりとしたクロスをその柳沢がなんとかゴール前に落とす。そこに福西が駆け込んで、この試合一番のチャンスボールをイランゴールに叩き込んだのだ。


 ここでの引き分けは十分に価値が有るもの。このゴールでぐっと日本に流れが引き戻されるものと期待していたが、逆にイランの動きが活発化する。後押しする12万人の観衆の前で無様な試合は出来ないのだろう、ルーズボールに対する出足が断然変わってきた。不注意なパスはよくカットされ、あわやというシーンが出始める。


 そして、今日の試合のポイントがやってくる。後半30分、左に流れたトップのカリミに中澤がつく。ダエイの代わりにトップに入った選手なのだからマークにつくのは間違いではない。だが足技でパスコースをこじ開けられると、簡単に質の高いクロスを上げられてしまう。

 3バックなら、この場面松田なり田中誠なりが対応したのだろうが、ヘディングしたハシェミアンの前と後ろにいたのは中田と加地、完全にボールウォッチャーになっていた。またも勝ち越し点はイランに。

 もしダエイが交代していなかったら、中澤とカリミというマッチアップは無かっただろう。カリミには他の人間がついていたはず。それならまだ空中戦に望みを託せた。ただ不運としか言いようが無い。


 この後この試合でカードをもらい、また休養あけだった小野に代えてフレッシュな小笠原。完全に孤立していた高原に代えてスーパーサブ「大黒様」が次々と投入された。

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 だがこの交代も完全に裏目。大黒はついぞ中田の玉足の速いパスに追いつく事ができなかったし、小笠原は気合だけが空回りしてファウルを連発、相手に時間を与えてしまっていた。


 このところ定番化しつつあった終盤のどんでん返しも起こらず、結局2-1のまま終戦となった。神風も中東までは及ばないらしい。


 この試合に意味を見出すとすれば、アウェーでの試合の厳しさ、最終予選の本当の過酷さをメンバーが身を持って知った事。そして使える選手とそうでない選手がはっきりとしてきた事ぐらいだろうか。
 
 この敗戦で、次節バーレーン戦が持つ重みがぐっと大きくなってきた。もしここで勝ち点3が取れないようだと事態はかなり厳しいものになるだろう。今は気持ちをきっちりと切り替える事が最優先。30日にはまた晴れやかな代表が帰ってくることを願っている。





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