3/07/2005

神戸3VS1C大阪 してはいけない3つのミス。

 スポーツが人間によって行われているものである以上、ミスは必ずついてまわるもの。戦術論、用兵学、テクニック、様々な要素が語られる中、勝敗を分ける要因がなんて事はないイージーなミスであった、などという事は往々にして有る。

 今日のセレッソはしてはいけないミスを3つも犯してしまった。それを見逃さなかった神戸が堅実に勝ち点3を上げただけの、実にシンプルなゲームだったと思う。

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 試合を回想しよう。フォーメーションはPSMの広島戦と同じ。布部とファビーニョは縦の関係で、古橋と森島はかなり自由に動き回る。

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 試合開始1時間前から始まった、馬鹿馬鹿しいほどショーアップされたセレモニーに違和感を覚えているうちに、セレッソは開幕戦の1stゴールを実にあっけなく奪われてしまう。

 神戸のフィードを江添が相手(恐らく播戸ではなかったか)と競り、クリアが不完全な状態に。キーパー吉田の飛び出しが一歩遅れたところへ二列目から来た薮田にボールをさらわれ、ゴールに流し込まれたのだ。ゲートで観客達に無料で配られたクリムゾンレッドの小旗が一斉に打ち振られる。アウェー独特の居心地の悪さを感じた。


 セレッソはファビーニョを軸に攻めを構築していこうとするのだが、精彩を欠く。左サイドのゼ・カルロスはパク・カンジョが常にマークしており、しかも後ろにはもう一枚DFがつく徹底ぶり。前半開始30分ぐらいは何も仕事が出来ず、何度も苛立ちを露にしていた。

 ターゲット役の黒部も北本の激しいチャージにボールキープが出来ない。黒部は前を向いた時の圧力は強力なのだが、背を向けた状態からのバリエーションが少なく、上手くボールをまわせない。

 この辺りは神戸松永監督が良くセレッソを研究し、持ち味を消していたなという印象が強かった。セレッソを研究するなど去年の事を考えると有り得ないような話だが、実にしたたかにゲームをコントロールしていたと思う。


 それでも前半30分頃から、セレッソもペースを掴み始める。比較的手薄な右サイドを森島と久藤がややぎこちないながらも進出し、相手のバランスを崩し始めたのがきっかけだった。何度かいい形を作り、期待を持たせる展開で前半を終える。


 後半になってもその流れは変わらなかった。右サイドでリスクを犯す事で、左のゼ・カルロスも生きてくる。ファビーニョは相変わらず本調子ではなかったし、古橋もいつものキレを欠いていたが、ようやくクロスやミドルで掛川を慌てさせるシーンが増えてきた。

 そんな中で、同点弾が生まれる。ゴール前での混戦から最後に詰めたのは黒部。今日バースデーだったストライカーが、セレッソサポーターの前で名刺代わりの一撃を浴びせたのだ。実はその直後、もう一度黒部に決定機がやってくるのだが、これは大きくふかしてしまう。今思うとあれが決まっていれば、というシーンだった。


 いよいよ流れはセレッソへと傾いていたのだが、ここで攻めに気をとられると守備に隙が生まれるという悪癖が現れてしまう。相手のコーナーキック、ニアへのボールをバックヘッドでゴール前まで運ばれると、そこにカズがドフリーで待ち構えていた。ほんの少し方向を変えるだけでいい、簡単なシュート。

 誰がマークについていなくてはいけなかったのかは判らなかったが、私の座っていた席から観ると、吉田がパンチング出来ていたようにも思うし、もう少しニアの選手にケアが有っても良かったように感じた。後悔しても遅いが、1点目同様「防げる失点」だったと思う。


 実にあっさりと勝ち越しゴールを奪われたセレッソだったが、攻め駒は多彩、時間も30分以上残っていた。小林監督のチョイスは完全に攻撃に比重を置く布陣へのシフト。まず右サイドをバランス重視の久藤からタテへの力が持ち味の廣山へ。

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 さらに矢継ぎ早に布部を下げて西澤を投入。2トップ2シャドーへとフォーメーションを変える。

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 この二つの交代は実に効果的だった。西澤のポストプレーは素晴らしいものだったし、廣山は右サイドの脅威で有り続けた。この二人の投入で森島の飛び出しもキレを増し、廣山のクロスからあわや同点弾というヘディングを放っている。


 それ以外にもゼ・カルロスのミドルや江添のミスキック気味のクロスなど、何度もゴールかと思われるシーンが連続したのだが、神戸の堅守の前に決めきれず、逆にロスタイムにボールを奪われると、絵に描いたようなカウンターからホルヴィのファインゴールでトドメを刺された。このゴールはシュート自体も素晴らしかったし、こういうリスクを覚悟した中での失点なので、特に責める要素は無い。


 スコアこそ3-1という結果に終わったが、収穫も多く、修正点も明確なので、次節からでももう少し良いパフォーマンスを見せられるのではないか、というのが私見。

 収穫から言うと、ブラジル人トリオをはじめ殆どの新戦力が「使える」存在だった事が大きい。新しい3バックは予想通りスピードに振られる場面も有ったが、致命的な程では無かったし、空中戦は去年より数段強化されている。ファビーニョやゼ・カルロスもマークを受けてもある程度色が出せていた。

 修正点というのはタイトルにもした「3つのミス」の事だ。2つはキーパーの吉田の物。流れの中から一つ、セットプレーから一つ、失点に繋がる大きなミス。それ以外にも危なっかしい場面のオンパレードで、素人目にもレベルが低いように感じた。

 しかし最後の1つ、というかそもそものミスが一番大きい。それは小林監督が犯したミス。「勝利の為にベストなメンバーを組む」というごく当たり前な事をしなかったミスだ。吉田の起用については多くのサポーターが首をひねったはず。

 まだ経験の無い若いキーパーであるならば、何度も試合に出す事で個人としてのレベルアップや周囲との連携の強化が期待出来る。だが吉田はまかりなりにもゴールキーパーの中では最年長であり、正直な話これ以上伸びる余地が有るのか疑問。実際PSMとこの試合の間に練習試合も組まれていたが、今日の吉田がPSMから成長していたか、連携が取れていたか、と聞かれれば、答えはNOだ。

 スケープゴートを作るのは容易い。だから観戦記を書く際は極力そういう話の組み立てにする事を避けているつもりだが、今日はあまりに酷すぎた。


 次節はホーム開幕戦とはいえ、相手は去年のチャンピオンチーム横浜Fマリノス。ミスを見逃してくれるチームではない。英断を期待して、雑感を結ぶこととする。





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